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介護の本書評「review-kaigo」

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第370回 左手で字を書けば脳がめざめる

左手で字を書けば脳がめざめる

親の入院・介護が必要になるとき いちばん最初に読む本

左手で字を書けば脳がめざめる
井上 肇 (著)

内容

右利きの人が左手を訓練すれば、眠れる脳が活性化されて認知症を予防するという。質の高い老後をめざして日記や塗り絵を左手でこなすなど、両手使いで人生を変える挑戦をしてみようと啓発する一冊。早く老け込む人は、決まって新しい体験を避けている。そこで、右利きの人があまり使わない左手を右手同様に使えるようにすれば、脳に大きな刺激を与えてボケ防止や認知機能低下防止に効果があるという。本書ではその根拠と実際の取り組み方などが記されている。

書評

人は誰しも「死」を迎えるが、その過程である老化には質がある、と筆者。「質」の高い老後はどのようにして得られるのか?

現代は100歳時代と呼ばれつつある。素晴らしいことだが、同時に死亡前に自立した生活を送れない期間が男性は9年、女性は12年もあるという。さらに独居老人は約600万人おり、放置された金融資産は143兆円にも上るという。なのに、健康保険制度は瀕死の状態だ。明らかに政策的に大きな歪みが生じているが、政治は何も手を付けることができていない。死亡前に自立できない期間が延びることは、医療費が莫大となり、本人や家族の生活を破綻させるのに十分な威力を持つ。次世代は、満足な医療が受けられなくなる可能性すら孕んでいるのだ。

本書の目的は、元気なうちから「両手使い」を訓練しておくことで、加齢による心身の危機を回避する知識や技術を身につけておくというもの。筆者は、これを高齢者の「次世代に対する義務」だと言っている。できるだけ早くスムーズに両手使いを身につけるにはどうすべきか。本書の解説を読みながら食事や書字から始めてほしい、と筆者。ただ、両手使いが認知症防止などに効果があるかどうかは、学問的にはまだ証明されていない。だが、筆者自身が多くのケースを目撃しているという。

漫然と年齢を重ねるのではなく、眠れる細胞を呼び覚まし、「質」の高い老後をめざしてみるのも良いのではないだろうか。

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