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介護の本書評「review-kaigo」

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第351回 玉ちゃんの奇跡 ~母親の認知症の進行を止めた 愛の介護ドキュメンタリー~

発症から看取りまでの赤裸々な10年間

親の入院・介護が必要になるとき いちばん最初に読む本

玉ちゃんの奇跡~母親の認知症の進行を止めた 愛の介護ドキュメンタリー~
常盤 宗夫 (著)

内容

介護には必ず介護する側とされる側が存在する。だが、どちらも幸せになる介護というものはなかなか存在しないのも事実だ。本書では、新聞記者の筆者とその母親が介護を通じて、時に言い争い、時に心を通わせるストーリーだ。介護する側とされる側、お互いが幸せを感じられる看取りまでの王道とはどんなものなのか。

書評

介護は突然やってくるモノだが、必ず予兆というものが存在する。筆者の母親の場合は骨折とウォーキングだった。そしてたび重なる火の不始末ともの忘れ。最初は年齢のせいと思っていたが、たび重なる出来事に不審を抱くことになる。

そして最初の診断での出来事が綴られているが、本人も認知症であることなど微塵も考えていないので、検査を受けること自体に拒否反応を示すエピソードはなんとも切ない気持ちになった。そして費用の関係で老人ホームから特養に移ることになった時のエピソードも、家族、医者、入居者仲間の思いや人間関係、しがらみなど、優しい文章ではあるがなかなかリアルに描かれている。そして母に大腸癌が発覚し、手術するかどうか本人に確認するところでは、認知症が一時的に治ったのではないかと思うほどしっかりしていた様子が伝わってきた。

おおよそ10年ほどの認知症との付き合いがありながら、家族から愛された筆者の母。それは彼女に明るさと優しさがあったからじゃないかと思った。そして亡くなったあとのエピソードも思わず笑顔になるほど微笑ましい。最後の1ページ、最後の1行まで温かい気持ちにさせてくれる一冊となっている。

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