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介護の本書評「review-kaigo」

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第350回 親の介護がツラクなる前に知っておきたいこと

ラクになるには「ちょうど良い接し方」が必要

親の入院・介護が必要になるとき いちばん最初に読む本

親の介護がツラクなる前に知っておきたいこと
島影真奈美 (著)

内容

親の介護はいつも突然にやってくる。頭ではわかっているが、本当にその時を想像して理解している人は少ないだろう。本書では、親の暮らしや介護、入退院、終活などで、親と揉めないためのヒントが満載だ。親の老いが不安だったり、すでに介護のある日常に疲れを感じている人は必読の一冊。

書評

著者は、夫の両親が立て続けにアルツハイマー型認知症と診断され、突然おふたりの認知症患者を抱えることになったという。年1回ほどの帰省時に顔を合わせる程度しか関係がなかったが、介護を始めてみるとその「赤の他人」としての距離感が、決して悪いことばかりではなかったのだという。

一般的には、認知症になっても、自分の生活に土足で踏み込んでくるようなまねをされたら、たとえそれが実の子どもであっても親としては許しがたいものだ。「もう父さんも母さんも年なんだから」「あなた達は認知症なんだから」と説明をしても、納得して受け入れてくれることなどあるわけがない。そこを我慢して、根気よく説明し納得してもらうというのは、血を分けた実の子どもにとっては難しい。なぜなら、実の子どもにとっては壮健だった頃の親の記憶が色濃く残っているから。親が認知症であることを理解はしていても、どうしても「昔の父さんなら、昔の母さんなら、こんなことを説明しなくてもわかってくれたのに」という気持ちがあるからだ。

しかし著者は違う。夫の両親は極論すれば「赤の他人」。しかもそれまで濃い付き合いもなく、良くも悪くも感情を強く移入する相手ではなかった。だから、必要なこと、やるべきことを情緒にとらわれることなく行うことができる。

認知症の親も、相談されて自分の意思で承諾するステップを踏むことで、親にとっては「自分ごと」になる。子ども側も不要な罪悪感に苛まされることもなくなる。嫌なことを無理強いされないという信頼感があるだけで、聞く耳を持ってくれやすくなるし、介護体制も整えやすくなるのだ。

本書は、老いた親とぶつかりやすいシチュエーションの切り抜け方、揉めずに物事を解決する作戦が記されている。親の心に効果的に働きかける第一歩、ストレスを抱えなくても親をサポートできるヒントを見つけ、行動するために活用できる一冊となっている。

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