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介護の本書評「review-kaigo」

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第348回 認知症の人が「さっきも言ったでしょ」と言われて怒る理由

「忘れる」と「覚えづらい」は違うのだ!

親の入院・介護が必要になるとき いちばん最初に読む本

認知症の人が「さっきも言ったでしょ」と言われて怒る理由
木之下 徹(著)

内容

本書のテーマは、認知症とともに、人として暮らすこと、生きること。耳障りのよい話ばかりではなく、「今の認知症の本当の話」が書かれている。もし認知症になっても、絶望の淵に追いやらず、諦めず、に自分の人生の主体者として生きぬくためのヒントが書かれている。認知症になっても人生は続くのだから。

書評

筆者は認知症の人を5000人診察したという。認知症を抱えた家族の中には、生活が破綻したり、糞尿まみれになって生活している裕福な家族、医療機関に連れていけない家族、さまざまな悩みを抱える家族と出会ってきた筆者。だが、なかにはまばゆいほどにいきいきと暮らしている認知症の人もいる。看取りをするなかで「こんなふうに自分の人生を閉じられたら良いな」と思える人にも出会ったという。

本書は今の認知症の本当の姿が記されている。認知症予防が金儲けの道具にされている現実や、脳トレという現代の怪談についてなど、今の常識を常識と考えず、筆者自身が出会ったり、体験したことをもとに書かれている。認知症の本当の姿を見ることは、認知症の本人や周りの人が前向きに生きるうえで大切なことだと考えている。高齢化社会の時代を迎え、今は誰でも認知症になる可能性を秘めているのだ。

今は心配する側にいるあなたも、いつ認知症になるかわからないのが現実だ。本書では、そうなったときに、諦めずに生きぬこうとするためのヒントが記されている。認知症になったからといって人生が終わるわけじゃない。死ぬ瞬間まで人生は続いているのだから。認知症の人が、何を考え、何を感じ、何を求めて行動しているのか。本書を読めば、その一端を理解することができるだろう。

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