介護のコラムを読む

介護の本書評「review-kaigo」

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第332回 ボケた家族の愛し方

介護女性の悩みを解決するコミックエッセイ

親の入院・介護が必要になるとき いちばん最初に読む本

ケた家族の愛し方
丸尾 多重子 (著)、長尾 和宏 (監修)、北川 なつ (イラスト)

内容

「認知症と聞くと、暗い気持ちになる」、「この辛い気持ちを誰かにわかって欲しい」、「家族に忘れられて悲しい」、「遠方にいる親をどうしよう」、「家と施設、どちらが良いのだろうか」といった家族の介護に頑張る人がぶち当たる悩みの数々。リアルだけどあたたかい、泣けて笑えて心がスッと楽になるリアルなコミックエッセイ。

書評

人は若い頃に人生設計を考えるとき、介護を受ける、介護をするなんて項目を立てることはない。というか、立てた人は皆無だろう。筆者は、両親と兄の3人を介護した経験で、最後に残ったのは「後悔」だったという。それは、当時の自分が医療のことも介護のことも、何も知らなかったという後悔だ。

末期がんの痛みに苦しんだ母に「緩和医療」を探して上げられなかったことへの「詫び」の気持ちが、筆者自身が主宰する「つどい場さくらちゃん」の設立へと突き動かしたという。この「つどい場さくらちゃん」は介護者や介護従事者の交流に場を提供し、悩みを分かち合うことで介護者の孤立を防ぐ場として、大きな役割を果たしている。

筆者は介護は「家族関係の通信簿」だという。長い年月でできあがった関係は、すぐにやり直せるものではない。日々蓄積されるどうしようもない感情を吐露できる場があれば…という自身の想いが「つどい場さくらちゃん」を生み出したという。

たとえボケても、自分の変化は自分自身が一番わかるという。心の中は不安でいっぱいで、家族に心配を掛けたくないから、自分の変化を悟られまいとその場を取り繕おうとしてしまうのだ。だからこそ、介護の要は「家族」であり、本人が言えない分、医者やケアマネージャーに対しては、家族が「伝える力」を備えて発揮することが大切だという。

介護で大切なことは介護技術や知識ではなく、人とのつながりや工夫、待てること、だと筆者。「つどい場さくらちゃん」でたくさん食べて、皆といっぱいしゃべって、いっぱい笑って、いっぱい泣いてほしい、そんな場をすべての人が持てるように本書を記したのだと感じた。

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