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【お悩み112】母とのふたり暮らしを続けたい私。「迷惑をかけたくない。弱る前に死ねないかな?」と繰り返す母。

【お悩み112】母とのふたり暮らしを続けたい私。「迷惑をかけたくない。弱る前に死ねないかな?」と繰り返す母。のイメージ

私が生まれてすぐに離婚した母は、それ以来、ひとりっ子の私を育てるために一生懸命働いてくれました。私も母のことが大好きで、幼い頃からなんでも話す関係。結婚したあとも、母が暮らす実家から、2駅ほど離れただけのところに新居を借りて、暮らしていました。残念ながら、子どもには恵まれなかったのですが、夫との仲も良好。夫の実家には飛行機や電車を乗り継いで5時間ほどかかるので、お正月に帰るぐらい。週末はふたりで遊びに出かけたり、母の暮らす実家に帰ったりと楽しく過ごしていました。

そんな幸せな日々が2年前、いきなり終わりました。夫が交通事故であっさり亡くなってしまったんです。現実を受け入れられず、ただ泣くばかりの私に、母は「私の家に戻っておいで。昔みたいに、一緒に暮らそう」と言ってくれました。以来、母と二人きりの生活を続けています。

母は今年で68歳。とっくに仕事は辞めており、今はのんびりと猫の世話をしています。家事や炊事は私と半々の約束なんですが、昨年から派遣の仕事を始めた私を気遣って、かなりの分を母がやってくれています。仕事から戻ると、その日の用事の大半が終わっているような感じですね。

そんな母が最近気にしているのが、自分自身の介護のこと。テレビや新聞などで見ているうちに不安になってきたようで、「これからもお前と一緒に暮らしていきたいけど、私に介護が必要になって迷惑をかけるのはイヤ」「弱ってしまう前に、死ねないかしら」と気弱なことばかり言ってきます。母にはこれといった持病も無く、健康診断などでも特に注意が必要なところはありません。

ただ、昔からの友人が病気になったり、昔の上司が車いすで生活していることを知ったりと、自分の年齢を意識する機会が増え、今後が不安なようです。

私自身は、可能な限り母と一緒に実家で暮らしたいと考えています。でも母が私に対して「負担をかけている」と気に病むような状況になるのもイヤです。

母と何を話し合い、これからに向けてどんな準備をすれば良いのでしょうか?

相談者さんがお母さんを思う気持ち、お母さんが相談者さんを思う気持ち。その両方が強く感じられますね。月並みですが、素晴らしい親子愛だと思います。

母さんはまだ68歳で、持病もなく、日常生活も問題なく送れているとのこと。ですから今は、「将来、介護が必要になったらどうしよう」と親子で不安を膨らませる時期ではないと思います。むしろ、元気な今だからこそできる準備があるはず。

私ならお母さんに「介護が必要になるかどうかは、今は誰にもわからない。でも、もし必要になったとしても、私ひとりで全部やるわけじゃないよ。そのために介護保険も地域のサービスもある。一緒に調べておこう」と伝えます。

そのうえで、私なりにやるべきだと思うポイントを整理してみました。

1.「何が怖いのか」を聞いてみる
「迷惑をかけたくない」という言葉だけで終わらせず、もう少し具体的に聞いてみてください。例えば、次のようなことを不安に感じているかもしれません。
 ↓
・寝たきりになったらどうするのか?
・認知症になったら迷惑をかけるのではないか?
・トイレや入浴で世話になるのがつらい?
・お金が足りるのか?
・娘が仕事を続けられなくなるのではないか?
・猫の世話はどうなるのか?
・最後まで家で暮らせるのか?

不安の正体がわかれば、打つべき手も見えてくるはずです。

お母さんが話している途中で、「そんなこと考えなくていいよ」「まだ若いんだから大丈夫」と打ち消してしまうと、本人は不安を言えなくなってしまいます。まず聞く。そのあとで、一つずつ不安の材料を減らしていく。この順番が良いと思います。

2.二人で地域包括支援センターへ行く
ぜひ一度、お母さんと一緒に、お住まいの地域を担当する地域包括支援センターを訪ねてみてください。地域包括支援センターは、要介護になった人だけが相談する場所ではありません。高齢者の総合相談や介護予防も正式な役割です。市町村が設置しており、保健・医療・介護・福祉について相談できます。

「68歳で、まだ元気なのですが、将来の介護を本人がとても心配しています。今からできる介護予防や、地域で参加できる活動を教えてください」と伝えれば、さまざまなことを教えてもらえるはずです。

地域によっては、体操教室、介護予防教室、健康相談、住民主体の「通いの場」などがあります。厚生労働省も、運動だけではなく、栄養、口腔機能、社会参加などを組み合わせた介護予防を進めています。

「認知症にならない方法」を探すというより、認知症や要介護状態になるリスクを下げながら、元気に暮らせる期間を延ばしていくと考えるほうが現実的だと思います。

3.母娘で一緒に公的制度のポイントを学ぶ
おそらくですが、お母さんの頭のなかには「介護=娘の世話になること」といったイメージがあるのではないでしょうか。

もし将来、お母さんに介護が必要になったとしても、相談者さんが食事、入浴、排泄、掃除、通院などをすべて担う必要はありません。介護保険の要介護認定で「要介護」「要支援」と認定され、ケアプランを作れば、状態に応じて訪問介護、訪問看護、デイサービス、訪問リハビリ、ショートステイ、福祉用具など、さまざまなサービスを組み合わせることができます。

お母さんの将来像を、「娘に介護してもらいながら暮らす」ではなく、「必要なサービスを使いながら、なるべく娘と一緒に暮らし続ける」に変えることが重要だと思います。

お母さんにも、「私が全部介護するつもりじゃないよ。プロに手伝ってもらいながら、一緒に暮らせる方法を考えよう」と伝えてみましょう。お母さんが「娘の人生を介護で潰してしまう」という心配から、解放されるかもしれません。

お住まいの地域でどんな公的制度やサービスが利用できるのかについても、地域包括支援センターで教えてもらうことが可能です。

4.母娘ふたりの日課をつくる
不安は、暇な時間に育つもの。一緒に過ごす日課を作ってみてはどうでしょうか。

オススメは歩くこと。夕食のあと20分、猫の話をしながら近所を回る。休日は少し足を伸ばして、川沿いや公園まで。足腰の維持と気分転換が同時に手に入ります。

ガーデニングもオススメです。プランターでハーブや小松菜を育てれば、水やりという毎日の役割が生まれ、収穫が食卓につながる。「明日やること」が具体的にある人は、老いへの怯えに飲み込まれにくいものです。

家事の分担も、この機会に見直しを。お母さんが多めに引き受けてくれている現状は、実は悪くありません。ただ「やってもらっている」のではなく、「子どもの頃から好きだった、お母さんの味噌汁が飲みたい」「同じ洗濯機を使っているのに、お母さんが洗うと仕上がりが柔らかい気がする」といった形で言葉にして伝えると、お母さんも「私にも役割がある」と喜んでくれるはずです。

5.お母さんの居場所を増やす
相談者さんと一緒に過ごす時間だけが生きがいだと、その依存がお母さんの不安のもとになります。親娘関係が良いのは素晴らしいことですが、これから10年、20年先を考えるなら、お母さん自身の人間関係や居場所を持っておいたほう良いのではないでしょうか。

多くの自治体が、高齢者が週1回以上集まって体を動かす「通いの場」づくりを支援しています。こちらも地域包括支援センターで紹介してもらえます。公民館のサークル、図書館の読み聞かせボランティア、猫好きなら地域の保護猫活動も良いかもしれませんね。

確かに、今できることがいっぱいありそうですね。早速、母と一緒に地域包括支援センターに行ってみたいと思います。

これで母の「死ねないかしら」という言葉が減ってくれると良いんですが。

一つ補足を。

「死ねないかしら」という言葉については、少し注意が必要だと思います。

この一言だけで、お母さんがうつ病だと判断することはできません。しかし国立長寿医療研究センターは、高齢者のうつ病について、「気分が落ち込む」「楽しめない」「眠れない」「気力が出ない」「自分に価値がないと思う」といった症状に加え、「死について繰り返し考える」ことも症状の一つとして挙げています。

「弱る前に死にたい」「生きていても仕方がない」といった発言が繰り返されるようになったり、眠れない、食欲がない、好きだったことを楽しめない、外出しなくなった、強く自分を責める、といった変化が重なってきた場合は、単なる老後への不安と決めつけないでください。

かかりつけ医にまず相談し、必要に応じて精神科や心療内科に繋いでもらう方法があります。最初から精神科に相談しても構いません。

地域包括支援センターで相談すれば、こうした相談に乗ってくれる医療機関を教えてもらうことも可能です。お母さんの前だと相談しにくい場合、相談者さんひとりで地域包括支援センターに行っても構いあません。

ありがとうございます。母の言動については、注意深く見守っていくことにします。

これから先も母と一緒に暮らしていけるイメージが沸いてきました。

お母さんは「迷惑をかけたくない」と考えている。相談者さんは「一緒にいたい」と考えている。この2つの考えについて、まだきちんと話し合えていないような感じがします。

夫を亡くした相談者さんを迎え入れてくれたのは、お母さんです。今度は相談者さんが「お母さんと暮らしたい。それは我慢じゃなくて、私がそうしたいから」「どちらかひとりが犠牲になるんじゃなくて、一緒に人生を楽しむ方法を見つけよう」と伝える番。制度の勉強も、散歩も、そこから先の話です。

母娘で将来を怖がるのではなく、母娘で少しずつ備える。そんな気持ちで、少しずつ前に進んでくださいね。

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