義母が要介護のため、訪問介護でヘルパーさんに来てもらったり、ショートステイで外泊したりしながら暮らしています。介護保険サービスだけで日常的な介護をまかなうことはできないため、義実家で同居中の義妹夫婦が協力。なんとか成り立っているようです。
私の妻は外資系の企業で働いており、私より多忙。収入も私よりかなり上で、義母の介護費用の大半を負担しています。
そんな状況を見ながら不安になってきたんですが、私の親が要介護になった場合に、仕事と介護を両立することはできるんでしょうか?
私は次男で、兄と弟がいます。それぞれ実家から離れた場所で暮らしており、仕事も多忙。みんな結婚しているんですが、兄と弟の妻は実家と疎遠で、ここ数年は実家にも来ていないはずです。
兄弟のなかでは私が一番実家に近いんですが、それでも車で1時間半ぐらいかかります。家のローンや生活費のことを考えると、とてもではありませんが、妻に親の介護を頼むことはできません。
私が実家に帰省するとしても、仕事を続けながらだと週末中心となり、平日の対応は難しいはず。平日も実家に寝泊まりする必要が出てきたら、仕事を辞めざるを得ないのかもと考えています。
仕事を続けながら親の介護をすることは可能です。むしろ、今後の親子の生活を考えると、介護離職という選択はすべきではないと思います。
ただし、「仕事をしながら、自分が親の身の回りの介護をする」と考えると、両立はかなり難しくなります。義母さんのケースは、義妹さん夫婦が同居して介護の中心になっています。相談者さんの実家には現役世代が住んでいないわけで、義母さんと同じやり方は成り立ちません。
大切なのは、相談者さんが介護の担い手になるのではなく、介護保険サービスや地域の支援を組み合わせて、「自分が実家に行かなくても、親の生活が成り立つ体制」をつくることではないでしょうか。
車で1時間半という距離は、毎日の介護をするには遠すぎます。しかし、地域包括支援センターやケアマネジャーとの連絡、兄弟間の調整、契約や費用の確認などを担うには、決して遠すぎる距離ではありません。
重要なポイントをいくつかまとめてみました。
■親と兄弟で話し合っておく
最初に必要なのは、親が元気なうちの家族会議です。
お父さん、お母さんに、
「介護が必要になったら、どこで暮らしたいか」
「自宅で暮らせなくなったら、施設に入ることをどう考えるか」
「誰に何を頼みたいと思っているか」
「延命治療や入院について、どのような希望があるか」
などを聞いておきましょう。
ただし、親の希望を聞くことと、その希望をすべて家族がかなえることは別の話です。例えば、親が「最期まで自宅で暮らしたい」と希望しても、家族が仕事を辞めなければ実現できないのであれば、現実的な選択とはいえません。
親の希望を聞いたうえで、兄弟それぞれが「できること」と「できないこと」を率直に共有することが重要です。
■兄弟に対し、距離に応じた役割をまかせる
実家に一番近いからといって、相談者さんが介護のすべてを背負う必要はありません。ただし、離れたお兄さんや弟さんに、相談者さんと同じことをやってもらう必要もありません。
それぞれの家からの距離や仕事の状況、収入などに応じて分けて整理してみましょう。
例えば、相談者さんが「地域包括支援センターやケアマネジャーとの窓口を担当する」代わりに、お兄さんや弟さんには、次のような役割をお願いしてはどうでしょうか?
↓
・介護費用を多めに負担する
・定期的に親へ電話をする
・インターネットで施設やサービスを調べる
・書類や支払いの管理を手伝う
・月に一度、交代で帰省する
・緊急時に相談者さんの代わりを務める
・相談者さんの帰省にかかる交通費を負担する
お兄さんや弟さんの奥さんが実家と疎遠ということなら、最初から介護の担い手として期待しないほうがよいでしょう。まずは実の息子である3人が、自分たちの問題として話し合うべきです。
■介護費用と相続について話しておく
介護が始まると、介護保険サービスの利用料だけでなく、医療費、おむつ代、配食費、住宅改修費、交通費など、さまざまなお金が必要になります。
誰がどの程度負担するのか、立て替えた費用をどう精算するのかを、あらかじめ決めておきましょう。
また、介護の負担が一人に集中する可能性がある場合は、相続についても避けずに話し合う必要があります。
「一番動いた人が、相続のときに多くもらえばよい」と口頭で約束しても、そのとおりになるとは限りません。相続人による特別な介護などが「寄与分」として認められる場合はありますが、通常の家族の協力を超える貢献と、それを証明する資料などが必要で、絶対に求められるものではありません。
親が介護の負担に応じて財産の配分を変えたいと考えているのであれば、元気なうちに遺言などについて、弁護士や司法書士、公証役場に相談しておくほうが確実です。
少なくとも、介護に使ったお金、帰省した日、行った手続きなどは記録しておきましょう。
■親のお金を少しずつ確認する
時間がかかっても、親からお金のことを聞き出しましょう。ほぼ確実にイヤがられると思いますが、何回でも諦めずに確認していくことが大事です。必要に応じて、お兄さんや弟さんからも確認してもらいましょう。
介護費用のもととなるのは、基本的に親のお金。子どもたちは、それぞれの生活に負担がない範囲でサポートする程度に留める必要があります。そのためには親のお金事情を把握することは、極めて重要です。
何回かに分けて、下記のようなポイントを聞き出していきましょう。
↓
・年金はいくら受け取っているか
・預貯金がどこに、どの程度あるか
・生命保険や医療保険に加入しているか
・自宅以外の不動産があるか
・借金やローンが残っていないか
・毎月の生活費がどの程度か
・通帳、印鑑、保険証券、重要書類の保管場所
「相続のために知りたい」というよりは、「万一、介護や入院が必要になったときに、すぐ動けるようにしておきたい」と説明したほうが、話してもらいやすくなるはずです。
■親が元気なうちに地域包括支援センターへ相談する
親に介護が必要になってからではなく、元気なうちに実家近くの地域包括支援センターを訪ねておくことをオススメします。
地域包括支援センターは、高齢者や家族からの総合相談、介護予防、権利擁護、地域の支援体制づくりなどを行う、市区町村が設置する相談窓口です。
実家のある地域で、下記のようなサービスが無いかや、利用方法を確認しておきましょう。
↓
・体操教室や通いの場
・介護予防教室
・認知症予防やフレイル予防の取り組み
・配食や見守りサービス
・緊急通報サービス
・高齢者向けの移動支援
・介護保険外の生活支援
親が地域とのつながりを持ち、健康寿命を延ばすことができれば、介護の開始を遅らせたり、介護が必要になっても重度化を防いだりできる可能性があります。
また、介護が始まる前から相談先と顔をつないでおけば、急変したときに動きやすくなります。
■介護保険サービスを積極的に使う
介護保険制度は「介護が必要になった人を支える」ためであるのと同時に、「介護する家族を支える」ための制度でもあります。
認知症の有無や心身の状況にもよりますが、次のようなサービスを積極的に使いましょう。
↓
・訪問介護:ヘルパーさんに自宅へ来てもらい、生活援助(調理、洗濯、掃除など)や身体介助(食事介助、排泄介助、入浴介助など)を受ける
・デイサービス:日中施設に通って、介護を受ける
・ショートステイ:施設に数日泊まって、介護を受ける
仮に親がサービスの利用をイヤがったとしても、子どもとして利用を強く推すことをオススメします。
介護する側が倒れたら元も子もないので、サービスを使い倒すくらいの気持ちでいてください。
■「平日に実家へ泊まり込む」のを前提にしない
平日も実家に寝泊まりしなければならない状態が続くのであれば、それは「仕事と介護を両立できる体制がつくられていない」ということです。
訪問介護だけでなく、下記のようなサービスも組み合わせてみましょう。
↓
・デイサービス
・訪問看護
・ショートステイ
・福祉用具
・配食サービス
・見守りサービス
・介護保険外の家事支援
・定期巡回・随時対応型訪問介護看護
・小規模多機能型居宅介護
「家族が親の生活を支え、サービスで不足分を補う」のではなく、「サービスで親が生活できるように考え、家族は足りない部分だけを補う」という順番で考えることが大切です。
どんなサービスを組み合わせるべきかについては、ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談しましょう。
■在宅介護が難しくなったら、施設介護に移行する
親の希望は大切ですが、在宅介護を続けるかどうかを、親の希望だけで決めるのはやめておくべきだと思います。
夜間の排泄介助が何度も必要になる、徘徊や転倒が増える、服薬管理ができない、火の不始末がある、家族が頻繁に仕事を休まなければならないなど、安全や生活が維持できなくなった段階では、施設介護への移行を検討する必要があります。
「親が施設をイヤがるから、子どもが仕事を辞める」という選択をすると、親子ともに生活を壊してしまう可能性が極めて高くなります。私は「在宅生活が成り立たなくなった場合は、親が希望していなくても、安全を優先して施設に移ってもらうべき」だと考えています。
最初はショートステイを増やしたり、施設を見学したりしながら、少しずつ慣れてもらうのが良いのでないでしょうか。
繰り返しになりますが、親の介護が始まったからと言っても、仕事を辞める必要はありません。介護が始まっていない今だからこそ、話し合いや情報収集などを行うチャンス。積極的に行動なさってください。
無理をして、私が義妹のような生活をする必要はないんですね。
やるべきことが具体的にわかったので、兄弟とも連絡を取って話し合おうと思います。




