叔母の介護を、ひとり娘(自分から見て従妹)が放棄した場合の対応について教えてください。
法的な手続きや叔母を施設等に入れる手続きなどについて。
叔母の夫は既に他界しています。
ひとり娘の従妹は、独身アラ還ニートで現在58歳です。
従妹は20代後半に会社を退職後、仕事をしていない筋金入りのニートです。
私の両親は既に亡くなっており、叔母にとって身内と言えるのは、私ぐらいしかいない状況です。
叔母さんの今後が心配な状況ですね。今後、相談者さんにも影響がありそうで、不安になるのも当然のことだと思います。
一番大切なのは、相談者さんが叔母さんと従妹の生活を、すべて背負い込まないことです。
叔母さんの危険な状態を見過ごさず、必要な情報を行政や専門職に伝えること。そして、できる範囲で初動を手伝った後は、基本的に地域包括支援センター、市区町村、ケアマネジャーなどに対応を任せるのが良いと思います。
■従妹さんの介護義務について
叔母さんと従妹さんは親子なので、民法上、従妹さんには扶養義務があります。ただし、扶養義務があるからといって、必ず同居して、従妹さん自身が食事、排泄、入浴などの介護をしなければならないという意味ではありません。
今回の場合、従妹さんが長期間無職であり、生活能力や経済的余力がないことが容易に想像される状態。「扶養してください」と言っても、できる状況ではありません。おそらくは、叔母さんの年金が主な収入源でしょうし。
ただし、同居している状態なので、従妹さんが叔母さんに対して「お金を使い込む」「食事を与えない」「病気なのに受診をさせない」「必要な介護サービスを使わせない」「長時間放置する」といったことを行うようなら、保護責任者遺棄や高齢者虐待に該当する可能性があります。
■まずは地域包括支援センターへ相談しよう
まず、叔母さんが住んでいる地域を担当する地域包括支援センターに連絡しましょう。
その際は、単に「ひとり娘が介護してくれません」と伝えるのではなく、次のように具体的に伝えることが大切です。
「叔母が高齢で、夫はすでに亡くなっています。ひとり娘は58歳で、長期間仕事をしておらず、叔母の介護や生活管理を続けられる状態ではありません。介護放棄だけでなく、叔母の預金や年金を使い込む可能性も心配しています。叔母の安全確認と介護サービスの導入、財産保護、娘への生活支援を含め、世帯全体の支援を検討してください」
できれば、次の情報についても、可能な範囲で伝えましょう。
↓
・叔母さんの年齢、病気、認知症の有無
・現在できない生活動作
・要介護認定を受けているか
・食事、服薬、受診、金銭管理の状況
・叔母さんと従妹が同居しているか
・従妹さんが通帳、印鑑、キャッシュカードを管理しているか
・すでに不審な出金があるか
・電気、ガス、家賃、税金などの滞納があるか
・叔母さん本人が施設入所を希望しているか
地域包括支援センターや市区町村には、高齢者虐待の相談を受け、事実確認、安全確認、関係機関との調整などを行う役割があります。生命や身体に重大な危険がある場合は、市区町村が一時的な保護や、老人福祉法による「やむを得ない事由による措置」を検討することもあります。
「食事が取れていない」「衰弱している」「必要な薬が飲めていない」など、生命に関わる状態であれば119番です。暴力や財産の持ち去りなどが、まさに起きている場合は、110番も検討してください。
■施設利用について
通常の施設入所は、次のような流れになります。
↓
1.要介護認定を申請する
2.ケアマネジャーを決める
3.叔母さんの心身、資産、希望を確認する
4.施設の種類や費用を比較する
5.見学や面談を行う
6.本人または法的な代理権を持つ人が契約する
叔母さんがまだ要介護認定を受けていない場合は、地域包括支援センターに申請を手伝ってもらいましょう。すでに認定を受けている場合は、担当ケアマネジャーを通して施設探しを進めることになります。
従妹さんが施設入所に反対したとしても、叔母さん本人に判断能力があり、本人が施設入所を希望しているのであれば、基本的には叔母さん本人の意思が優先されます。
叔母さんが認知症などで、施設入所の契約内容や費用を理解できない場合は、成年後見制度の利用を検討することになります。
金銭的に余裕がある可能性が低そうなので、基本的には特別養護老人ホームなどの介護保険施設を中心に考えていくことになります。費用を軽減するための手続きについても、地域包括支援センターに相談してみましょう。
介護保険施設については、法令上、身元保証人を置かなければならないという規定はなく、身元保証人がいないことだけを理由に入所を拒否することは不適当とされています。ただし、実際には費用の支払い、緊急時の連絡、死亡後の手続きなどについて調整を求められるため、ケアマネジャー、施設相談員、市区町村、成年後見人などによる役割分担が必要です。相談者さんが「身元保証人になってほしい」と言われる可能性も、高いのではないでしょうか。どこまで自身が対応できるかを考えたうえで、難しそうなら、地域包括支援センターへの相談時点で、その旨を伝えておくと良いと思います。
今回の場合、地域包括支援センターから養護老人ホームの利用を勧められるかもしれません。特養などの介護保険施設と違って、家庭で養護を受けることが難しく、かつ環境上・経済上の理由がある65歳以上の高齢者について、市区町村長の措置で入る施設です。介護保険施設が「施設と本人の契約」なのに対し、養護老人ホームは「行政措置」なのが大きな違いです。家族機能が崩れていて、在宅維持が難しく、経済面も厳しいケースでは、こちらの検討が現実的なことがあります。
地域包括支援センターやケアマネジャー、叔母さんとの話し合いの結果、「当面は在宅生活を続ける」という判断になったのであれば、在宅介護についての必要なサービスが利用できるように、ケアマネジャーに相談しましょう。
■従妹さんを福祉につなごう
叔母さんが施設に入った場合、従妹さんが自立して暮らしていける可能性は低いと思われます。
20代後半から約30年間も働いていないということは、精神的な問題、対人不安、発達上の特性、身体疾患、借金、社会との断絶など、外からはわからない事情が隠れている可能性もあります。
地域包括支援センターから、同じ市区町村の「生活困窮者自立相談支援機関」につないでもらうのがオススメです。この窓口では、本人の状況に応じて、生活相談、家計改善、就労準備、住居支援などを組み合わせた支援プランを作ります。すぐに一般就労が難しい人を対象とした就労準備支援もあります。
長期間ほとんど外出していない、人との接触を避けているという状態であれば、「ひきこもり地域支援センター」も有効な相談先です。本人だけでなく、家族からの相談も受け付けています。
精神面や健康面の問題が疑われる場合は、保健所、精神保健福祉センター、医療機関などにつなぎましょう。収入も資産もなく、叔母さんの年金や預金がなければ生活できない状態であれば、福祉事務所に生活保護を含めて相談する必要があります。
地域包括支援センターには、次のように依頼してください。
「叔母だけを施設に入れて終わりにすると、同居している娘が生活できなくなる可能性があります。高齢者担当だけでなく、生活困窮、ひきこもり、精神保健、生活保護の担当部署とも連携し、世帯全体を支援してください」
仮に従妹さんが支援を拒否したとしても、身内である相談者さんが相談することはできます。ただし、従妹さんを無理に就職させたり、医療機関に連れていったりできるわけではありません。行政の福祉担当には、訪問や面談を重ねながら従妹さんとの間で関係性を構築してもらい、その後、支援につなげてもらうような流れとなります。
■相談者さんが、どこまで支えるべきか
大事なことなので、最後にもう一度、まとめてお伝えします。
相談者さんが担う役割は、次の範囲にとどめることを強くオススメします。
↓
・地域包括支援センターに情報を伝える
・最初の相談や訪問に可能な範囲で同席する
・叔母さんの希望や生活状況を専門職に伝える
・必要書類や連絡先を整理する
・財産の使い込みが疑われる場合は記録を残す
・成年後見制度について専門家につなぐ
一方で、次のことまで引き受ける必要は無いと思います。
↓
・叔母さんを自宅に引き取る
・従妹を自宅に住まわせる
・叔母さんや従妹の生活費を継続的に負担する
・施設の連帯保証人になる
・従妹の借金を肩代わりする
・自分一人で通帳や年金を管理する
・すべての行政手続きを代行する
「叔母さんを助けること」と「相談者さんが叔母さん一家を背負うこと」は別です。
相談者さんやご家族の暮らしを守ったうえで、余力がある範囲で手を差し伸べる。叔母さんの介護は地域包括支援センターとケアマネジャーへ、財産管理は成年後見人などの第三者へ、従妹さんの生活は生活困窮・ひきこもり・福祉の担当窓口へ、それぞれ役割を分けて任せてください。
漠然した不安に対して、わかりやすく回答してもらえて嬉しいです。
「私が全責任を負うことになったらどうしよう」と考えていたので、安心できました。




