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介護の本書評「review-kaigo」

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第340回 母はもう春を理解できない

詩人による母の介護エッセイ

親の入院・介護が必要になるとき いちばん最初に読む本

母はもう春を理解できない
藤川幸之助 (著, 写真)

内容

50歳代でアルツハイマー病を患った母を20数年にわたって介護した詩人の著者。父が介護するも、その父の他界とともに母と人生を歩むことに決めた著者は、その後20数年にわたって険しくて優しい旅に出る……。本書では、そのたびの道程で「見つけたもの」を丁寧に言葉にしてくれている。

書評

筆者は、母が認知症の診断を受けた時、突然に事態に混乱してしまい、正常な判断や行動ができなかったと顧みる。母の命と向き合う中で、いろいろな想いが生まれ、いろいろな感情に出会い、常に迷い、時には理不尽とも思える医療的判断をしてきたという。

筆者は読む人に、自分自身に問いかけてほしいという。「自分の親ならどうする?」「自分の連れ合いならどうする?」「自分の子どもならどうする?」と。そして「自分ならどうしてほしい?」とも。これらの問いは、自分自身の人生を見つめ直す良いきっかけになることは間違いない。医療や介護の仕事に就いている人にとっては、医療やケアの質について改めて考えるヒントになるだろう。

さらに、介護や認知症は遠い世界のものと思っている若い人たちにとっても、超高齢化社会を生きぬく心づもりをするヒントやきっかけになるのではないだろうか。すべての人の人生の延長線上には、必ず老いがある。老いをどう捉え、どう自分の人生と重ね合わせていくかを考えるヒントになるだろう。

母の介護をしていた期間は生きづらい日々の連続だったと語る筆者。だが、その生きづらさの中にこそ、人生の喜びと味わいがあったのだと、今になって感じているという言葉が印象的だった。

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