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介護の本書評「review-kaigo」

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第177回 崩壊する介護現場

このままだと日本は姥捨て山国家になる。

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崩壊する介護現場 (ベスト新書)
中村 淳彦

内容

介護の仕事は3K(キツい、汚い、給料が安い)と言われている。離職率も高く、5年で全員が辞めてしまう計算となる。マスコミには重労働と低賃金ばかりが取り上げられるが、本書では急増する介護現場での事件、介護労働者の実態を方向しながら、破綻寸前の介護現場の現状を紐解いていく。

書評

フリーライターである筆者は、これまで多くの業界を取材してきた。しかし、介護業界の状況は異常な世界に見えたという。介護保険制度に内在する多くの矛盾、低賃金による職員の貧困、慢性的な人手不足、資格制度や雇用政策の失敗……。現在の介護業界の労働者や介護に取り組む法人の多くは、社会福祉の概念である「豊かさ」や「幸せ」を語るが、介護の現場はほど遠い状況で、生きるだけで精一杯というのが実情だと感じた。介護業界は深刻に壊れている業界だ、と筆者は語る。

金儲けを企む経営者や社会起業家は「夢」「希望」「幸せ」などの言葉を垂れ流している。だが現場は、慢性的な人材難で貧困にあえぎ、終わりなき品質向上を求められて疲弊している。さらに国の失政なども絡み、介護職員の不満と不安はとどまるところを知らない。現状を見ていると、筆者の目には夢や希望は何もなく、将来性もないという。そこにあるのは「需要」だけだというのだ。本書では、日常的に介護現場で勃発している事件や困難、介護労働者の実態を記しながら壊れつつある介護現場の現状をリアルに伝えている。極端と思われるケースもあるが、それも含めて現実なのだ。

そろそろ現実と向き合う時期かもしれない。いったい、介護業界に何が起こっているのか。どうすればこれからの超高齢化社会を乗り越えることができるのか。この国が破綻してしまう前に本書を読み、我々一人ひとりが考え、そして行動しなければならないのかもしれない。

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