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介護の本書評「review-kaigo」

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第175回 十年介護

4万件の相続現場を見た経験からのアドバイス。

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十年介護 (小学館文庫)
町 亞聖

内容

元日本テレビアナウンサーだった筆者は、入社前から母の介護を行っていた。大学受験、大学生活、アナウンサーの仕事のすべてを介護と両立させながら走り続けてきた筆者。その母のがん発見、闘病、さらには父の介護。アナウンサーという華やかな舞台からはうかがいしれない壮絶な過去を初めて明かす。

書評

大学受験を目前に母親がくも膜下出血で倒れ、何の介護もないままに始まった介護生活。大学受験、浪人生活、大学生活、そして憧れのアナウンサー生活。すべての暮らしには、「介護」の二文字が重なっていたという町亞聖さん。介護を初めて8年後、今度は子宮がんが見つかり2年間の闘病生活の後に亡くなってしまう。さらに今度は5年間に及ぶ父親の介護が待ち構えていた。母を失った悲しみからアルコールやたばこをやめられない父親は、医師の宣告に耳を貸さないほど、心を病んでいたのかもしれない。

介護をしているとは思わせないほど常にバイタリティにあふれ、前向きな気持ちで走り続けてきた。それが、アナウンサーや報道関係者に必須の「人の話を引き出す」という能力につながっていたのかもしれない。

先輩アナウンサーの徳光和夫氏によれば、介護のことは職場では一切話さなかったという。それでも、相手の話を受け入れる懐が深く、相手はつい本音を語ったり、言わないでおこうと思ったことをつい語ってしまう能力に秀でていた。介護の経験が優しさや彼女自身の人間的魅力につながっていたのかもしれない。

本書を読んで感じるのは、困難や試練も前向きに捉えて立ち向かっていくことで、それは貴重な経験となり人生の糧となるということ。プラス思考に生きることで人は人生において、より多くの答えを見出すことができるのではないかということ。本書はそんなことを示唆しているのかもしれない。

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