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介護の本書評「review-kaigo」

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第150回 変わる家族と介護

家族はセーフティーネットにはならない

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変わる家族と介護 (講談社現代新書)
春日 キスヨ

内容

社会心理学を専門とする筆者が、さまざまな問題を抱えた家族との現場での出会い、そこでの出来事や当事者の語り、さらには日常生活で見聞きした事実を読み解く形で、を通して現代日本の家族の危機について述べられている。家族であっても、それぞれの立場によって現実の見え方は異なるのだ。

書評

家族に個人を守る「セーフティネット」としての役割を担わせて、福祉制度の根幹に置く考えは、さまざまな政府の報告や提言などに見ることができる。ただ、こうした家族の制度的位置づけは、介護を担う家族院が存在するという前提に立っている。つまり、日本の家族は欧米の家族とは全く異なるという考え方に立脚しているのだ。

だが現実は、子世代と同居していない世帯が全高齢者世帯の半数を超えているのだ。「嫁」として介護を担う人も少なくなっている。また、家事などで外部サービスを利用するようになり、分業や代行によって、個人の無力化がもたらされるようになっていることも否めないという。これは、家族が共同生活者だった時代には見られなかった傾向だ。

現在は、別居のまま家族を介護することや、夫や息子が介護するケースが増大している。家族の共同性を支えていた生活基盤の劣化や崩壊によって、要介護高齢者を守るセーフティネットとしての役割を家族が担うことが非常に困難になっている。

本書では、日常生活のエピソードや当事者の語りを読み解きながら、日本で多くの家族が陥る危機的状況を多くの人たちに知ってもらい、危機がこれ以上深まらないために皆で考えてもらいたい、というのが筆者の想いだ。そうした想いから、本書では、筆者が出会った現場の事例をエッセイと解説の形でまとめている。

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