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介護の本書評「review-kaigo」

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第89回 変わる家族と介護

「無縁社会」時代の介護を考える。

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変わる家族と介護 (講談社現代新書)
春日 キスヨ

内容

日本の社会はこれまで、最終的に個人を守る「セーフティーネット」の役割を家族に負わせてきた。家族の変化や多様化とは全く別の次元で、個人が自分らしい生き方を求め、それが実現できる社会は素晴らしい。だが、家族の形が大きく変化したことで、日本の福祉制度のあり方そのものが限界に達し、家族が重大な生活困難に陥った時、誰の助けもなく、命すら危ぶまれるのが日本の現状だ。

書評

現在の日本の要介護高齢者を巡る状況は、単なる少子化や独居老人、高齢者夫婦の増加だけが原因ではない。家族の共同性を支えていた生活基盤の劣化や崩壊によって、要介護高齢者を守るセーフティーネットとしての役割を「家族」が担えなくなっているのだ。

さらに、日常生活ではこうした変化をもたらした要因が渾然一体となって作用し、家庭内の葛藤や家庭崩壊、ネグレクトや暴力といった高齢者への虐待問題など、さまざまな「家族問題」が生じ、それが表面化しているのだと筆者は語っている。

本書では、さまざまな問題を抱えた家族との出会い、そこでの出来事、当事者の語り、さらには筆者が日常生活で見聞きした事実を読み解く形で、現代日本の危機について述べられている。高齢者との関係や立場によって現実の見え方は異なってくるかもしれない。そうした点にも留意した上で筆者は自らの見解を本書の中で述べている。

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