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介護の本書評「review-kaigo」

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第57回 介護現場は、なぜ辛いのか

特養で働いた著者が見たリアルな日常を綴る。

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介護現場は、なぜ辛いのか: 特養老人ホームの終わらない日常 (新潮文庫)
本岡 類

内容

雑誌編集者から作家に転じた筆者は、両親が要介護になったのを機にヘルパー2級の資格を取った。その際になんとも納得いかない複雑な空気を感じ、ジャーナリスト魂に火がついたのか、実際に介護現場で働くことに。本書は、ヘルパーの立場から見た、特別養護老人ホームの現実の姿に迫る一冊だと言える。

書評

両親が要介護状態になったことをきっかけに、介護ヘルパー2級の資格を取得した筆者。ひょんな事から特別老後老人ホームで働くことになった筆者が見た現実は、一見平和に見えるが、その裏側には様々な歪みが見え隠れする壮絶な現場だったという。

介護報酬はアップしても、職員の賃金には反映されないかもしれないという悲観論、「他に勤め先がないから介護職に就いた人々」と「転職先がないから辞められずに介護食を続ける人々」が介護職に増える可能性が高い世の中の現実……。現在でも“荒れた職場”の代表とされる介護の現場。これからどうなっていくのか、自分が介護する側にも介護される側に回る可能性があるだけに、読んでいて不安になった。

本書を読んでいて、介護の現場は当たり前の環境作りが、当たり前に行われていないのを感じた。財政難を理由にハードワークを低賃金でやらせようとする行政の姿勢は、本気で介護の現場を改善しようという気が乏しいのだろう。だが、そういった問題の一つひとつを解決していけば、介護の現場にも明るい光が差すのかもしれない。そう信じたいと思う。

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