介護に疲れた人への処方箋。
内容
在宅で介護を維持するために最も大切なことは、被介護者側の問題ではない。介護者側の不安と負担感をいかに軽減していくかだという。介護者異口同音に語るのは、「介護はひとりでやらなければならないと思っていたが、そうではなかった。周囲のみんなが協力しているのだと思えるようになると、方の力が抜けた」という。本書は無理しがちな介護者が『介護の森』で迷わないようにするためのマップとして活用できるだろう。
書評
介護で心が行き詰まる人が増えているという。「やることが多すぎて何も手につかない」「いつまで続くのか先が見えない」「何度も同じ話を聞かされて疲れた」など……これが介護に日々苦労している人たちの本音だ。介護者側はさまざまなストレスを抱え、他の家族にはわかってもらえない苦労や葛藤がある。介護家族の心理面のフォローは、介護保険制度やケアのプロフェッショナルだけでは十分ではないと筆者は語る。これが行きすぎてしまうと、介護放棄や暴力、自殺といった、悲しい結末に向かってしまうことが少なくないという。
ではどうするのか。自分で自分の心の状態や考え方のクセを知り、自分なりに予防することでダメージを最小限にする方法が最も確実だという。放置すると、やがて心がすさみ、介護で心が疲れ切って笑顔さえも忘れてしまうかもしれないという。現在、介護に携わっている人はこの本の第一章「心の相談室」をぜひ読んでいただきたい。
本書は、介護で心が疲れた人の「こころの処方箋」なのかもしれない。ちょっと無理をしてしまいがちな人には「介護の森」で迷わないようにするための地図として読んでおくのがよいだろう。