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介護の本書評「review-kaigo」

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第86回 日本人の死に時

日本人も長生きすることが幸せじゃない時代がやってくる?

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日本人の死に時 そんなに長生きしたいですか
久坂部羊

内容

「あなたは長生きしたいですか?」と聞かれたら、たいていの日本人は「もちろん」と答えてきた。しかし、高齢化社会が問題になるにつれ、「そんなに長生きはしたくない」と答える人が確実に増えている。その理由は、老いの現実に直面すると、それまで抱いていた長生きのイメージと実際があまりにもかけ離れているから。本書は、そんな長生きの良くない面にスポットを当てている。

書評

これまでの医療は寿命を延ばすことを最大の目的としてきました。おかげで日本人の平均寿命は男女ともに世界のトップレベルです。老いてもなお元気な老人が増えてきた。しかし、同時に寝たきりや認知症の人も増え、今の介護危機の根源となりつつある。だからといって「死ねばいい」というわけではない。医学の発展が進みすぎ、寿命を越えるほどに長生きさせてしまっているのではないかと筆者は語っている。

これからの老人医療で重視すべきなのは、治癒ではなく、本人のQOL(生活の質)だという。痛みを取って欲しい、薬を飲みたい、あるいは飲みたくない、そういったここの希望を最大限叶える中で最適な医療を提供することが重要なのだ。それは、当然いずれ訪れる死をどうやって迎えるかといった部分まで視野に入れている。

「長寿が良いとは思わないが、天寿は否定しない」という筆者。与えられた寿命でほどほどで死ぬのが幸せだという。老いても楽に生きるには、老いてから準備したのでは遅いのだ。本書ではそんな長生きの良くない面にスポットが当てられた一冊だ。こういった本で衝撃を受けるということは、ちまたにあふれる健康長寿情報が、あまりにもウソが多いということなのかもしれない、と感じた。

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