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介護の本書評「review-kaigo」

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第392回 認知症の私から見える社会

認知症の診断を受けた日から、世界は大きく変わってしまう。

親の入院・介護が必要になるとき いちばん最初に読む本

認知症の私から見える社会
丹野 智文 (著)

内容

認知症と診断された人にどのようなイメージを抱くだろうか。「何もできない人」、「すぐに物事を忘れる人」といったイメージを持つ人も多いだろう。自身も認知症と診断された筆者が、8年間の間に300人の認知症患者に会って話をした経験を通じ、認知症患者の現実を伝えている。

書評

筆者は若年性アルツハイマー型認知症と診断されて8年が経過している。認知症と診断された瞬間から、患者の生活はまるっきり変わってしまうという。しかしそれは認知症という病気のせいではない。認知症と診断されたからといって、次の日から急にもの忘れがひどくなったりするわけではなく、患者を取り巻く社会、そして周囲の人々の意識が大きく変わってしまうからなのだ。

理由は簡単。認知症になったら「何もわからなくなる」といった間違った情報や、重度の患者の症状ばかりがクローズアップされた結果、大きな誤解が生じているからだと筆者は指摘する。筆者はそうした患者自身やその家族の不安を煽るような社会に疑問を持っている。だが、周囲の人々がそうした誤った対応をしてしまうのは仕方がないと理解もしている。すべては「認知症のことを正しく知る人がほとんどいない」という状況から生まれているのだ。

筆者は本書で認知症患者のことを「当事者」と呼んでいる。それは「認知症に関わる当事者である」という意味で使っている。これもまた人々に誤ったイメージを植え付けないための筆者自身の取り組みのひとつである。本書を通じて当事者の話を聞き、認知症と診断された人の立場に立って社会を見つめてほしいと筆者は願っている。

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