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介護の本書評「review-kaigo」

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第387回 ヤングケアラー

若者による家族介護の実態がここに

親の入院・介護が必要になるとき いちばん最初に読む本

ヤングケアラー
毎日新聞取材班 (著)

内容

自分の祖母の介護を小学生が引き受ける……そんな子どもが本当にいるのか?妥当か?お手伝い程度ならともかく。そんな疑問は本書を読めばすぐに吹き飛ぶ。子どもが老人を介護する「ヤングケアラー」は実在する。本書では、新聞社の記者たちがヤングケアラーたちを取材し、「ヤングケアラー」の存在を世の中に知らしめるために綴り続けた記事が再構成されている。

書評

本書では「ヤングケアラー」と呼ばれる、小学生や中学生でありながら家族の介護を主介護者として行う子どもたちに直接インタビューし、その話を生々しく紹介している。

だが、決してヤングケアラーの子どもたちを「かわいそうな子どもたち」という視点で見ていない。もちろん支援制度の不備や周囲の無理解、家族なら面倒を見るべきと言う世間の価値観に縛られた被害者としての側面が示されているのは当然だが、そもそも多くの子どもたちが自発的に家族介護をしている。そこには家族への愛情や、現実を変えられないという諦念など複雑な感情が存在している。

元ヤングケアラーは「介護をしていて良かったと思えることもあった」という言葉を発するという。「怒」と「哀」だけを世に訴えるのではなく、「喜」や「楽」も含めてしっかりと描かれているので、よりリアルに「自分ならどうしたか」「何が最善なのか」を考えられたように思う。

本書は新聞記者たちが「まだ介護と無縁な人にこそ、読んでもらえる記事を書こう」という想いで書かれたものだ。ヤングケアラーの子どもたちの言葉や様子には、介護の有無を問わず、人生そのものが抱える普遍的な何かが含まれているように感じた。

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