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介護の本書評「review-kaigo」

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第386回 ボケ日和

認知症専門医が教える、上手なボケ方と介護方法

親の入院・介護が必要になるとき いちばん最初に読む本

ボケ日和
長谷川 嘉哉 (著), 矢部 太郎 (イラスト)

内容

今のところ、確かに認知症という病気を治す薬は存在しない。ただ、介護者が最も困る、さらには認知症患者の「怒りっぽさ」を抑える薬は存在する。そう、認知症患者の介護で困るのはもの忘れではなく怒りっぽさなのだ。本書は筆者である認知症専門医が、認知症という病気の症状や対応法が多くの実例とともに紹介している。

書評

「事前に知っていればだいたいのことはなんとかなるもんです。」と本書には書かれている。

筆者も認知症患者の家族のひとりだった経験があり、何より強く感じていることがあるという。それは介護者の生活と心に余裕がなければ、認知症患者自身を笑顔にすることはできないということ。近年は人権意識が高まり、介護の世界でも「患者ファースト」が叫ばれるようになっているが、筆者はそれを決して好ましく思ってはいないという。

そうした意見になるのは「守る側の人間に余裕がなければ、結局は守られる側の認知症患者だって幸せにはなれない」という持論から。何より介護する側が心身を守る余裕を持てるようにすることが最優先で、認知症患者のことを考えるのはその次だという。この順番を間違えると、結果的に良い介護にはつながらないというのが筆者の持論だ。

「認知症の介護家族も毎日笑って良い」と筆者。本書は介護する人が仕事して遊んで毎日を上手に過ごしてもらうために書いたという。認知症介護にしんどさはつきものだが、最初から知っていればしなくて済む苦労も少なくない。知識を事前に身につけておくことで、笑顔で見送ることができるというのだ。

本書では認知症の進行段階を「春夏秋冬」の4章に区切り、各段階で患者にどんな症状が表れるかを紹介している。これらは、将来の読者自身の家族の姿であり、物語でもあることを忘れずに読み進めたい。

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