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介護の本書評「review-kaigo」

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第357回 介護保険が危ない!

親の老後どころか、あなたの老後も危ない?

親の入院・介護が必要になるとき いちばん最初に読む本

介護保険が危ない!
上野 千鶴子、樋口 恵子 (編)

内容

2000年にスタートした介護保険。世の中の流れに合わせて保険内容を3年ごとに改訂しているが、実は3年ごとの改訂のたびにどんどん使い勝手が悪くなっているという。利用を掘り起こそうという動きがあったのは初年度だけで、3年目にはあっという間に利用抑制へと舵が切られ、どんどん不便にされつつある。本書ではその理由と、介護保険へ改悪の内容やその影響について、介護のプロが語っている。

書評

介護保険は2000年のスタート以来、3年後との見直し時にたび重なる改悪が行われ、政府が利用抑制をはかろうとしているのは容易にわかる。

これまでもたび重なる改悪が行われてきたが、今後は介護保険適用を要介護3・4・5の重度患者のみとし、生活援助を外して身体介護に限定、所得に応じて自己負担率を上げ、足りない部分は自費サービス利用を促すことで個人の財布から払ってもらう、というものだろう。
だが、改訂がこまめで全体像が見えにくいせいか、大きな反対論は生まれてこない。どれも社会保障費を抑制するための詭弁なのに、だ。とにかく制度の持続可能性を高めることに政府は必死なのだろう。

今さら介護保険がない時代には戻れない。介護保険廃止などと言葉にした日には、政治家はその職を追われるだろう。それほどに介護保険の恩恵は日本の津々浦々まで行き渡っている。そこで使い勝手を悪くすることで使われないように仕向けていくのだ。まさに制度の空洞化を狙っているとしか思えないのだ。

そして介護の商業科が進められようとしている。介護保険改悪もその一環だろう。本書では介護保険の現実を正確に伝え、これ以上後退させないことをめざしている。

「介護保険を作るのも守るのも市民の力」と筆者は語る。いったん引っ込めた改悪案もほとぼりが冷めればまた登場するのも間違いないだろう。だが、それを監視し、いつでも押し戻す力、知恵を蓄えておくために本書は役立つだろう、という筆者の言葉にこの本に賭ける思いを感じた。

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