介護のコラムを読む

介護の本書評「review-kaigo」

戻る

第356回 ボクはやっと認知症のことがわかった

自らも認知症になった認知症専門医

親の入院・介護が必要になるとき いちばん最初に読む本

ボクはやっと認知症のことがわかった
長谷川 和夫 (著), 猪熊 律子 (著)

内容

「痴呆」から「認知症」という呼び名に変更するための国の検討委員にもなり、何千人もの認知症患者を診てきた認知症専門医。彼自身が認知症になって何を想い、どう感じているのか,当事者となって始めてわかったことがあるのか。本書ではその率直な感想や感じること、それでもなお認知症を研究対象として向き合う想いなどについて語っている。

書評

筆者は、認知症か加齢によるもの忘れかを判断する認知機能検査「長谷川スケール」を開発した。さらに、「認知症」がまだ「ボケ」や「痴呆」といわれていた頃に、その名前を「認知症」と変更するために国とともに検討を重ねた人である。そう、まさに認知症専門医の第一人者と言えるのだ。解説を書いている読売新聞記者の先輩は「痴呆界の長嶋茂雄」と評したそうで、筆者の存在が認知症学界でいかに大きいかがわかる。

そんな人が自らも認知症になり、患者の立場になった時、何を想うのか。発症から二年、症状は進んでいると思う部分もあるが、周囲が思うほど自分自身は変わっていないと言う。昨日まで生きてきた自分の続きがここにある、と。そして、人生の大半を認知症と向き合ってきた自分が何を想い、どう感じているか、当事者になってわかったことを本書で伝えたいという。

実際に認知症になった感想は、症状が進行している自分をもう一人の自分が見ているような気がすると感じている。また、認知症と向き合ってきた筆者自身の生き方、日本の認知症の歴史など、筆者だからこそ書き残せることを少しでも残しておきたいとのことで、そうした記述もこれから認知症と向き合う可能性がある人にとっては役立つのではないだろうか。
認知症患者を診てきた自分が認知症になったからこそ、認知症の人やその家族が暮らしやすく、生きやすい日本になるための手伝いができたら本望だという。

親ケア.comオンラインサービス「繋がる」
おやろぐ