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介護の本書評「review-kaigo」

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第324回 高齢者介護ビジネスの闇

「慈善事業」と「偽善事業」の分別がない高齢者事業

親の入院・介護が必要になるとき いちばん最初に読む本

高齢者介護ビジネスの闇
阿倍 叶志 (著)

内容

「介護福祉の現場では、介護士ひとりが約20人の高齢者を介護しているという現実がある。この現実は高齢化社会の真の危機である」と叫ぶ筆者は、高い志とビジネスセンスで、高齢者介護ビジネスで成功を収めた。そんな彼が、黒字だった高齢者ビジネスと決別した理由を語る。

書評

本書では、高齢者介護ビジネスで成功した筆者が業界の実態を赤裸々に告白している。なぜ黒字経営だった高齢者施設を手放し、業界と決別してしまったのか。そこには介護福祉に無関心な国、行政、業者、そして日本国民がいた……。

介護福祉業界を取り巻く人間の主義や思考は極端に歪んでいるという。「高齢者需要」をあてこみ、利益追求主義で参入する事業者が増えた結果、高い志を持って福祉の業界に入った事業者が翻弄されてしまう。社会的弱者を助ける「慈善事業」と己の利益しか考えない「偽善事業」の分別が成されていないというのだ。筆者はそんな現状を憂いている。

本書は「高齢者介護ビジネスの闇」と「経営者の極意」の2部からなる。前者は、筆者が高齢者介護事業という業態での経営を通して身をもって学び感じてきた事業理念と実態経営である現実社会との乖離が、可能な限り赤裸々に語られている。後者は、そうした事業経営に取り組む中で、あわや心が折れそうになる苦難や逆境に際して、『心の支え』として抱き続けてきた想いを経営者の極意と銘打ってまとめたものだ。

現代社会に存在する事業の業態は千差万別だ。その経営のあり方や手法もさまざまなのも事実だ。しかしながら、それでもそこにはすべてに通じる『柱』のようなものがあるはずだ。一人ひとりの経営者が追求する理念や理想は異なるかもしれないが、いずれも信念を持って邁進する「生き様」が伴ってはじめてそれぞれの夢は叶うものだ、と筆者は語る。

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