介護のコラムを読む

介護の本書評「review-kaigo」

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第322回 家族はなぜ介護してしまうのか

社会学的見地から「介護」を解き明かす

親の入院・介護が必要になるとき いちばん最初に読む本

家族はなぜ介護してしまうのか
木下 衆 (著)

内容

「認知症患者の介護を頑張りすぎてしまうのはなぜか?」という筆者の疑問からこの本は生まれたと言える。「介護はプロに」と思いながら、介護に巻き込まれてしまう家族。そこには「認知症」という病にヒントがあると考え、筆者は社会学的アプローチから「認知症」に迫る。

書評

最初に書いておくが、この本は良くある介護ノウハウや介護の知識、介護に関する最新情報が得られるような本ではない。ましてや「家族介護はこんなに素晴らしい」とか「家族介護はこんなにひどい」というものでもない。どちらかというと研究者がその研究結果を記した学術本だといえる。

家族介護はなぜ大変なのか、その大変さの源泉はどこにあるのかということ、そして現状では何が問題なのかに関する議論が展開されている。なぜなら、これらを正しく理解しなければ、建設的議論ができず、介護者や被介護者の幸せにならないからだ。

本書は各章の内容に加え、それに合わせたコラムが章末に加えられている。コラムから読むのもいい。その方が、各章の内容を読み進めていくうちにピンとくる部分がある可能性が高いからだ。さらに、各章の内容を自分に該当しそうな部分だけ拾い読みするのもいい。「同じような悩みを抱えているのは自分だけじゃない」と知るだけでも、元気が出る人がいるかもしれないからだ。すべての章のコラムを先にすべて読んでから、各章の内容を読み進めるのも良いかもしれない。それを決めるのは読み手であるあなた自身だ。

もちろんプロの社会学者には、最初から最後まで通して読むことをすすめている。本書は社会学の専門書として介護を捉えた一冊なのだから、そうした読み方をする人がいれば、筆者の本望と言えるだろう。

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