介護のコラムを読む

介護の本書評「review-kaigo」

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第393回 32歳。いきなり介護がやってきた。

30歳代、介護のせいで自分の人生も諦めたくない…。

親の入院・介護が必要になるとき いちばん最初に読む本

32歳。いきなり介護がやってきた。
あまのさくや (著, イラスト)

内容

若くして父が認知症になり、母を癌で亡くした筆者。30歳代で介護を経験することとなる切なくも愛おしい日々を赤裸々に綴ったエッセイ。69歳の父が若年性アルツハイマーと診断され毎日めまぐるしく記憶が変化する日々のなか、母が突然のガン宣告。その1年半後には亡くなってしまう。そこから父の介護は32歳の筆者に委ねられることになる。

書評

本書は父の様子がおかしい、と筆者が感じるところから始まる。外出しても目的地に辿り着けないことが頻発するようになり、家族は認知症を疑う。だが確証がないのでグレーのまま日々は過ぎていく。本人も病気である自覚がないので、医者に診せることもできない。だが、「昼にした約束を夕方に忘れる」といった記憶サイクルが、「10分前にした約束を忘れてしまう」までにそう長い時間は掛からなかったという。

本書では着実に進行していく様子が細かく記されている。それを読むだけでも、将来認知症患者を介護したり、当事者になるかもしれない人にとっては「こんな風に変化していくのか」と学びのひとつになるだろう。筆者自身「認知症とどう対峙すれば良いのかがわからなかったときが、お互いに一番辛かった時だと思う」と記している。

認知症の進行を「進化」と考える筆者。そこには、認知症になる前から続く家族間の愛情やご両親が子どもたちに注いだ愛情が結実したものと感じた。「認知症はみんな不幸になる病気か?」と問われたら、そんなことはないと父は身をもって教えてくれたと語る筆者。認知症患者の家族を持つことになるかもしれない人々にとって、本書が少しで心身ともに荷物が軽くなるヒントとなることを筆者は願っている。

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