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介護の本書評「review-kaigo」

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第375回 介護に役立つ人体力学

ちょっとしたコツで移動や移乗がスムーズに!

親の入院・介護が必要になるとき いちばん最初に読む本

介護に役立つ人体力学
井本 邦昭 (著)

内容

「介護はコミュニケーション!」をキーワードに、スムーズに相手を動かすなど、介護に役立つ人体力学的介護術を紹介。「密着」「ひねり」「腰を伸ばす」という3つの技を生かして相手の中心をつかまえて力を連動させることで、移動や移乗をスムーズにする方法が紹介されている。加えて、誤嚥を防いだり、痛みを和らげる体操の紹介も充実している。

書評

「介護で大切なことは、相手に寄り添うこと」と語る筆者。一方的に介護する、されるという関係ではなく、相手の力をコミュニケーションを取りながら進めていくことが大事だという。ただ手を貸すのではなく、する側とされる側の二人で協力し、お互いの力を引き出し合うことで相手のもっている可能性を引き出す、これこそが人体力学がめざす介護の形だという。

この「人体力学」とは、筆者が50年にわたって100万人以上の人の身体を診てきた経験から、不調や症状がどのように引き起こされるかを紐解き、体系化した独自理論。人間の身体は、臓器や骨、精神が身体の中でお互いにメッセージを出しあうことでバランスを保っているのだという。どこか1カ所でも不具合が生じると、それをカバーしようとした他の部位に負担が掛かり,その結果新たな不具合が発生することもあるという。そうした悪い流れの起点を見つけ、最小限の働きかけで修正して身体の力を引き出すのが人体力学なのだ。

人体力学では、「介護はコミュニケーション!」と考えられており、その根底にあるのは、井本整体と呼ばれる整体術の「命に対する礼」を大切にする姿勢に由来するという。本書では、人体力学の理論を介護の現場に生かすべく、さまざまな試行錯誤を行いながら辿り着いた人体力学的介護術が紹介されている。

もちろんそれぞれの介護術の動きは写真でわかりやすく紹介され、ちょっとしたコツ、「密着」「ひねり」「腰を伸ばす」の3つの技をどう使うかのポイントもしっかりと紹介されている。力まかせではない介護術だけに、非力な女性が誰かを介護する際や大柄の男性を介護する際には、特に役立ちそうだと感じた。

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