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介護の本書評「review-kaigo」

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第373回 もはや老人はいらない!

コロナより怖い、長生きが喜ばれない社会の到来

親の入院・介護が必要になるとき いちばん最初に読む本

もはや老人はいらない!
小嶋 勝利 (著)

内容

日本は超高齢化社会が進行していると言われている。老人の数は加速度的に増加し、このままだと日本は「老人だらけ」の国になってしまうだろう。だが、老人ホームの実態に精通する筆者は「本当にそうだろうか?」と疑問を呈する。その理由は「老人を殺してもおかしくない社会になっているから」という衝撃的なもの。本書では老人が追い詰められ、命を粗末にされている現場を目撃してきた筆者が、日本の高齢化社会の真実を語っている。

書評

日本は新型コロナウイルスの猛威に晒され、さまざまな方面で甚大な被害が広がっている。老人ホームでも、介護職員らが日夜感染拡大と向き合い、肉体的疲労や精神的ストレスを抱えながら満身創痍で介護に当たっている。

だが、人間の死亡率は100%。人は必ずいつか死ぬ。だが、このあたり前の話を自分の日常として受け入れられる人は限りなく少ない。人は生まれた瞬間から、死に向かって生きているにもかかわらずだ。なぜなら生と死は、どちらも病院という閉鎖的な空間で管理されるために身近な出来事として感じにくい、と筆者は解説している。

我々の人生の砂時計はあとどれぐらい残っているのだろうか。長生きがしたい人は、残り時間をできるだけ延ばしたいと考えているだろう。人生は長生きよりも生き様、と考えている人は、短くても太く豪快に生きようとするだろう。どちらが正しいのかは誰もわからない。だが筆者は、人は自分の人生のゴールが明確になると、「今」を大切にしようとするのだそうだ。今を大切にすることで、多くの人の人生は濃厚なものとなり、結果、後悔を減らすことができるのだという。

本書では介護付き老人ホームで職員、施設長、施設開発企画業務などに携わったという「老人ホームの裏の裏まで知り尽くしている」筆者が、現在の日本の老人ホームの実態を赤裸々に語っている。「日本は恐ろしい国になってしまった」と語るその理由が、本書には記されている。

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