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介護の本書評「review-kaigo」

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第216回 認知症になった私が伝えたいこと

認知症当事者が「ありのまま」を伝える。

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認知症になった私が伝えたいこと
佐藤 雅彦

内容

認知症の当事者が、自らの言葉を伝えるという一件不可能のようにも感じる取り組みに挑んだ本書。認知症当事者がその兆候を感じ始めてから、約10年以上にわたって書き留めたメモや資料、原稿をもとに作られている。認知症の理解のためには、認知症当事者に聞く、という一番の近道を実現した一冊。

書評

認知症は世間で言われているように怖い病気なのだろうか。筆者自身、認知症になりできないことは増えたが、できることもたくさんあることに気づかされたという。だが、アルツハイマー症の診断を受けた当初は、どの本を読んでも、「何も考えることができなくなる」「日常生活ができなくなる」「感情も意思もなくなる」といった記述ばかりで、生きる希望を失っていたという。

実際には、認知症の診断を受けて9年、ずっとひとり暮らしを続けているという。認知症でも色々な能力が残されていると実感しているという。だが、認知症に対する社会の誤った認識は、認知症当事者の生きようとする力を奪い、生きる希望を失わせるのに十分すぎるほどだ、という。筆者はこうした偏見をなくしていきたいと語る。

「できる」「できない」だけで人間を語ることはできない。自分が自分であることは、何によっても失われることはないのだ。認知症になると確かに不便だが、決して不幸ではないという。「認知症になっても、人生を諦めない」という気持ちで毎日を過ごす筆者の、前向きな考え方やごくありふれた日常を読むだけで、認知症についてのとらえ方が変わる一冊となっている。

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