認知症でも家族が一緒なら毎日に幸せがある。
つるちゃんとかめこ
くろだ かめこ
内容
自身の介護体験を綴ったブログを書籍化した本書。ブログから書籍へ、という最近流行の書籍化パターンは、介護の世界にも押し寄せているようだ。認知症と診断された母と共に生きる10年が、ほのぼのとした文章で綴られている。 介護だけではなく、家族の絆などについても考えさせられる一冊。
書評
物忘れや記憶違いなど、認知症の兆候を最初に見つけるのは家族だ。本書では、母親の異変に気づいた家族が、「ひょっとして認知症では?」「単なる老化現象?」の間で葛藤する家族の思い、さらには「認知症の兆候では?」という家族を激しく非難する本人の様子がしっかりと描かれている。
そして、認知症と診断され、徐々に病気が進行していく母親。筆者は、娘という立場から冷静にその様子を綴っている。だが、「認知症は大変」「認知症になったお母さんがかわいそう」と感じないのは、文章の端々から母親に対する愛情や感謝が感じられるからだろう。
認知症になっても変わらない、母の娘に対する愛情、娘の母に対する愛情が感じられるエピソードが、たくさん掲載されている。悲惨さや大変さばかりを並べるありがちな介護日記とは全く違う切り口で新鮮だ。家族愛をテーマにしたノンフィクションのエッセイとしても楽しめる一冊だと思う。