介護のコラムを読む

介護日記・二人の父の雑記帳

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第258回 父の歯科治療の思い出(2007年7月15日)

父の歯の治療には付き添って何年も通いました。
私、及び家族が20数年お世話になっている信頼できる歯医者さんに連れて行きました。
この歯医者さんはとても良い歯医者さんで、気に入っているのですが難点があります。
予約制ですが、予約時間に診てもらえず1時間2時間遅れなんていつものこと。
それでも治療したい人が通う歯医者さんです。
従って、予約時間通りにならないことを見通して予約します。

父と通い出した初日に歯医者さんには「父はアルツハイマーですから」と小声で伝えておきました。
当時「認知症」という言葉はまだなく、「痴呆症」と父のことを言うには、
まだまだ普通っぽくて忍びなく、横文字の「アルツハイマー」と言った方が聞こえが良かったからです。
予約しても1時間遅れの診察になるのはいつものことでしたが、
狭い待合室で認知症初期の頃の父は何とか待ってくれました。
「ここはどこなんだ?そうか、歯医者か…」
そんなやり取りを、待っている間何度も繰り返しました。
待っている間にトイレにも毎回行きます。
トイレは歯科のあるビルの急な階段を下りたところにあるので、
危ないのでトイレまで一緒に行きました。
父のトイレに付き合うのに、心の中で「やれやれ…」と思っている私でした。

認知症初期の頃は父も通常の人と何ら変わりなく、静かに治療を受けました。
ベッドのような形で傾斜がある診察台なので、「ここにこう座ってね」と教えるのですが、
どのように座るのか戸惑って、毎回「これでいいのか?」と聞きました。
そのうち、歯科に通うときに「歯医者は大したことしていないのにボロ儲けしているんだ!」などと、
文句を言うことが増えました。
待ち時間が長いので「何をしてるんだ!長く待たせて!」と待合室で文句を言うこともあって、
狭い待合室なので、コソコソっと父をなだめるのに気を遣うこともありました。
治療中、うがいをするとき、とても丁寧に「ガラガラッ!プッ!」と何度も繰り返す父が印象的で、
傍にいる衛生士さんと顔を見合わせて笑いました。

ある時、父の治療中、傍に立ってじっと見ていた私がなぜかクラクラッ!とめまいがして、
うずくまりそうになってしまいました。
今までに貧血症状に似たそのような状態になった事は一度もないのですが、
それがその後も再びあって、付き添いの私にはいつも椅子を用意されるようになりました。
それからは、一度もそのようなことは起きていません。
一体あれは何だったんでしょう?

そんなこともありましたが、
認知症初期から中期にかけての父の歯科治療は何とかうまくいっていました。
                    

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