介護のコラムを読む

介護日記・二人の父の雑記帳

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第250回 父の視力検査(2007年6月23日)

前回書いたように、父タクさんの白内障は特にひどい程ではありませんでした。
でも、メガネの度が合わなくなっていたこともあって、新しいメガネを作り父の誕生日のプレゼントにすることにしました。
そのため、待合室が広々として父の気に入っている眼科で視力検査を2回位しました。
2003年のことでした。
この頃、認知症発症10年。私が判断する尺度では認知症中期の後半。
文字は書かなくなったけれど、ある程度読む事はできました。

視力検査は一般によくある、何メートルか離れた位置で示されたひらがなや形などを片目ずつ読むやり方のです。
仮メガネのレンズをとっかえひっかえ、何度も同じ文字を読んでもらいました。
「えっ?!何だかわからない!!」
「見えるよ!!(穴が空いている向きは)上だ!!」
「なんだよー!!何言ってるんだ!!これか??これでいいのか??」
「どれを見るんだ?!」
そんな調子で、かなり父はイライラしながらも、一生懸命答えていました。
時々、父にわかりやすく説明しながらそばで見ている私は、父の怒りがいつ爆発するか?爆発寸前でハラハラ・ドキドキ!!
検査の看護士さんには父が認知症であることは伝えてありました。
視力検査をする看護士さんも、父の感情的な言葉を受け止めながら大変だったと思います。
手こずりながらも、父の怒りが爆発するまでには至らず、視力検査の長く感じる時間は終わりました。
視力検査が終わると父はまたいつものように穏やかになって、「この病院は広くていいな~」と満足そうでした。
この1年後、特養に入所することになるのですが、その時には、もうこういった視力検査ができる状態ではありませんでした。
視力検査で離れた文字を読んだり、輪っかの空いている部分が上だとか下だとか、そんなことを確認することは父にはもう無理でした。

そして、誕生日プレゼントとして父と一緒に専門店で選んだかなり高価なメガネを新調したのでした。
ところが、使い出してわずか10日程で、自宅で失くしてしまいました。
父がいつも使っている引き出しなど、思いつく所は全部探しましたがゴチャゴチャしていて見つかりません。
失くしたことがわかった日は、私が父の家に行かなかった日曜日だったせいもあり、見失った時の状況もよくわからないので、自宅でなくしたのに見つからないという悲惨な結果になって今日に至っています。
物を失くすのは認知症にありがちなことですが、今回は本当に残念でした。
それまで使っていたメガネは度が合わなくなっただけでなく、具合も悪くなっていたので、その後、父にメガネをかけることを諦めさせました。
今までも、メガネを何度も家の中で失くすことがあったし(たいていすぐ見つかった)、もう懲りました。
念のため、100円ショップのメガネを用意いておきました。
デイに出る時に「メガネは?」と聞く時がありましたが、適当にごまかすと、その後はあまりメガネのことを言わなくなりました。
メガネがなくても、あまり生活上困ったことはありませんでした。
ただ、よく目をこすることは多く、結膜炎になりがちでしたが…。

あれだけ面倒な視力検査をして高価なメガネを買ったのに、10日で、しかも自宅で失くして見つからないなんて…。
その後、メガネをかけなくなった父は、眉が下がった優しい表情のお爺さん顔になりました。
それ以前のメガネをかけた父は、ちょっと取っ付き難い冷たい感じの爺さん顔でした。

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