介護のコラムを読む

介護日記・二人の父の雑記帳

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第205回 石頭イズさんと認知症のお年寄り(2007年3月6日)

イズさんの有料老人ホームに、私が好きなおばあちゃんがいます。
その方は大抵車椅子に座っているのですが、じっとしていません。
「お母さん、お母さん!」と叫んでいたり、「あっちに行って!」と車椅子であちこちに連れて行ってもらったりしています。
ほとんど職員さんが一対一で付きっ切りです。
笑顔を見たことがありません。
食事もいつも介助されています。
どうやらこのホームの動ける方の中で、最も手が掛かる方のようにお見受けします。
時々、私と接触する機会がありました。
お話を聞いて、車椅子を少し誘導したこともあります。
手を差し伸べて来るので、手を握ってあげます。
私はこの方がいとおしく思えます。
一緒にいてあげたいな~と思ってしまいます。
家族ではないし、一日中一緒にいるのではないので、そう思ってしまうのかもしれませんが…。
イズさんの話によると、この方は昔、学校の先生だったそうです。
一見手に負えない感じにお見受けしますが、やつれた感じの中にも、どこか知的で凛とした面影があります。
このおばあちゃんの心情を思います。
ご本人が、何と言っても最もお辛いはずです。
私はこのおばあちゃんが好きになってしまいました。
でも、イズさんには迷惑で困った人で愚痴の対象となってしまうのです。

イズさん曰く。
「バカ!バカ!」と言われるのに黙ってはいられないよ。
凄い速さで追っかけてきてぶつんだよ。
凄い力でぶつんだよ。
あの女の子(若い職員さん)なんて、いつもぶたれているんだよ。
夜、部屋に入ってきて、僕の服を持って行っちゃって見つからなかったんだよ。
夜、廊下で「お母さん、お母さん!」と泣いてうるさいんだよ。
また、イズさんにはこの方以外の認知症の方についても、愚痴があって一通り聞きました。
それらについての対処法を話しましたが、全くイズさんは理解しません。
そのおばあちゃんの気持ちについても説明しましたが、全く理解できません。
認知症という病気なんだから…と言って、イズさんにわかる範囲で説明しました。
でも、イズさんには何を言っても、全く受け入れる余地がありません。
私もかなり心の中で、カッカとしてしまいました。

私が説明することについても、以下のように言います。
甘やかしておくから、ますますそういうことをするんだよ。
過保護にしてはいけない。
悪いことをしていて良いなんて、許されない。
まともな自分の方が変になっちゃう。
でもね、職員さんは全てわかっていて、お見通しなのよ♪
まともなイズさんの思いもわかっているのだから、大丈夫よ♪
私はあのおばあちゃんが好きだな~♪
イズさんだって、もしかして認知症になったら、あのようになるかもしれないのよ♪
そう話しても、吐き捨てるように「そんなバカな!」と言うイズさん。

以前にも、このような話は書きました。
元々頭の回路が混線気味のイズさんですから、認知症の方のことをわかってもらうのは無理なようです。
自分で熱心にやることが何もないので、人のこと、特に欠点ばかりに目が行って、それを批難することを生活の中心にしてしまっているようです。
認知症の方を理解できないなら仕方がない。
このように、人のことばかりに目が行かないような生活にさせなければ!
だって、何もすることがないんだもん。
イズさんは自分でもはっきりそう言いました。
情けないです。
ホームにいても、このホームは自由に色々とできるホームなのです。
自分の生き甲斐を自分で見つけることができないイズさん。
ああ、情けない。
私はいつもイズさんの生き甲斐になることは何か?考えています。
私が何かを用意してあげることでしか、物に目を向けることができない状況です。
そして、できれば認知症の方のことを少しでも理解して欲しいのです。

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