介護のコラムを読む

介護日記・二人の父の雑記帳

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第156回 タクさんの好きな歌 その2 軍歌編【認知症中期】 (2006年12月29日)

父が持っていた軍歌集「雄叫(おたけび)」は、士官学校の歌集なので、様々な軍歌が載っています。
昭和35年12月発行、財団法人偕行社事務局発行の非売品となっていて文庫本サイズ。
これを私はよく使わせてもらいました。
紙は黄ばんでボロボロですが、父が大事にしていた歌集です。
以前に書きましたが、父は大東亜戦争で中国内陸部へ出征しました。
父の場合、青春イコール軍隊なので、青春の思い出として軍歌があるようでした。
映画「三丁目の夕日」のワンシーンで、「戦争も行ったことないくせに…」と堤真一が言う場面が印象的でした。
父も同じことをよく言っていたからです。
戦争に行ったことで箔がついた?昭和30年代でした。
父と一緒に軍歌を歌っていると、たまに戦争を思い出して「よく生きて帰ってこれたと思う…」と言って涙を流すことがありました。
「戦争の時や軍隊では、そんな甘っちょろいもんじゃないんだぞ!!」と、いつも勇ましく話して聞かせていた父だったのに、認知症になってからは涙もろくなっていました。

この歌集の中に「仰げば巍々たる」(ああ玉杯の譜)という曲が載っています。
仰げば巍々たる市ヶ谷の 九重深き雲の上
玉葉の御身いや高く 北白川の水清く
久邇の光の浮かぶなる 誉れは高し我が武窓
国のためには北海の 雪踏み分けん旭川
玄海波は荒くとも 要塞まもらん対馬沖
風吹く夜半に村松の 月下に磨かん我が剣 
これは一番と三番なのですが、こんな調子で九番まであります。
亡くなる4年前に、父はこの歌の一番と三番を歌集を見ずに、思い出しながら歌い、私に教えてくれました。
何度も歌った曲ですが、テレビの懐メロなどでは全然聴くことのない曲でした。
この歌集の支那事変・大東亜戦争の項目に載っている曲で、「父よ貴方は強かった」や、勝って来るぞと勇ましく~♪の「露営の歌」。
若い血潮の予科練の~♪で始まる「若鷲の歌」(予科練の歌)。
さらばラバウルよ、また来るまでは~♪の「ラバウル小唄」。
今日も暮れゆく異国の丘に~♪の「異国の丘」。
あ~あ、あの顔で、あの声で~♪の「暁に祈る」など父と一緒によく歌いました。
金鵄かがやく日本の~♪と昭和15年2月11日に紀元2600年(紀元節)を迎え、それを歌った「紀元二千六百年」。
この歌は、昭和30年代に小学生だった私達子供達が、ゴム飛び遊びの時にこの歌を歌いながら遊んだ思い出があります。
昭和30年代は、まだ戦争の面影を引きずっていました。

アニメ「巨人の星」(昭和40年代)のテーソングはほとんど軍歌と同じ調子ですよね。
なので父に「これ知ってる?」と歌って聞かせました。
「思い込んだら試練の道を 行くが男の ど根性~♪」
「いい曲でしょ??」と言うと、「うん!なかなかいい曲だな!」と。
軍歌好きの父、一押しの曲です(笑)
そして、やっぱり父は「同期の桜」。
デイに行く時、送迎車が来る場所まで、この曲に合わせて二人で腕を組んで行進して行きました。
「貴様と俺とは 同期の桜~♪」と、元気が出るんですよね、この曲は!!

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