介護のコラムを読む

介護日記・二人の父の雑記帳

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第115回 イズさんの始めの一歩(2006年11月10日)

義父イズさんは、次に移る有料老人ホームの相談員との面談を昨日(11/9)行いました。
前にも私が何度かお会いしている相談員2名が、イズさんのいる老健を訪れ、私と共に約1時間半、主にイズさんから聞き取り調査をした内容となりました。
私は今までタクさんの施設利用や施設入所で何度もこのようなことはやっていましたが、タクさんの場合は認知症なので本人がこたえられず、全て私が父のことを語ることですんでいました。
イズさんは認知症ではないので、相談員もイズさんにたずねる形を取りましたし、私もイズさんがこたえることを優先し、あとで補足する形で話すに留めました。

そのせいか、イズさんが横道にそれつつ色々語ったので、結構時間がかかりました。
過去の病歴や症状など、イズさんは私が思っていた以上にきちんと話し、「認知症ではないこと」を証明しました。
いえ、「認知症ではないこと」を証明したころで、どうってことはないわけですが…。
心配していたイズさん本人の入所についての承諾云々をたずねられることはなく、面談を受けたことで本人が承諾したものとなりました。
そういう訳で、イズさんがその場でごねるようなこともなかったのでした。
けれど、話の成り行きで、「もっと近くに(良い施設は)ないのか?」などと漏らしていました。
イズさんなりの最後の抵抗でしょう。
趣味の話で、イズさんが囲碁とカラオケ、ギター演奏が得意であることを伝えました。
相談員の方が囲碁ができること、入居予定者にも囲碁ができる方がいるとのことで、何とかイズさんにその気になってもらうよう、私や相談員の方は盛り上げに努力を惜しみませんでした。
また、イズさんが今年読んだ本、「バカの壁」(養老孟司著)について、イズさんと相談員の方で盛り上がり、先行きにほのかな明かりが見えたような気がしました。

金銭管理の話では、イズさんの金銭に対する執着ぶりが伺えました。
現在の老健では、個人のお金は持たないことが原則です。
老健入所時に、イズさんの貯金通帳は私が預かり、イズさんの公私一切の金銭管理を私がしてきました。
これはタクさんについても同様でした。
次の有料老人ホームでも、失くしても良い程度のお小遣いをイズさんに所持してもらい、他は今まで通り私が管理していく予定です。
しかし、認知症ではないイズさんにとっては、それが不満でもあるようです。
自分のお金は自分で管理したいのが本音のようで、そのようなことをブツブツ言っていました。
「はいはい、わかりました」と私は返事したものの、共同生活の施設では、いくら個室部屋のホームであると言ってもそれは無理なので、大きなお金は持たすわけにはいきません。

何か買いたい時にすぐ使えるお金。
孫が来たときに、ちょっとお小遣いをあげたい。
家族で外食に出た時、皆の支払いを自分でしたい。
それが自由にできないなんて、人間らしい生活とは言えない。
そのようにイズさんは言いました。
今までの老健では、それができませんでした。
しかし、今度移るホームでも、それを全て叶えるのは難しいかもしれません。
施設に入るとは、そういうことでもあるのです。
健康や安心をある程度約束されているものの、金銭管理の制約は仕方のないことなのです。
年寄りにとって、何が大事かと言うと、「健康・安心・お金」が三大鉄則のような気がします。
亡くなったタクさんも、認知症になってからですら、やはりそうでした。
これらが満たされないと、年寄りにとっては不満が募ってくるようです。
それらを補うことを家族はやって行かねばならないと思います。
年寄りの生活とは、「自由・希望・愛」などのような若者が好む要素とは、かけ離れたものです。
何はともあれ、本人との面談が済み、あとは入居日を決め、入居に向かってことを進めて行くことになりました。

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