介護のコラムを読む

介護日記・二人の父の雑記帳

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第63回 認知症中期のタクさん その7(自宅入浴終章) (2006年9月15日)

入浴のとき、嫌なことばかりではなく、楽しいこともありました。
父の入浴介助一つ取っても、得たものは大きかったと思います。

◆おちゃめなタクさん
父に立ってもらって背中側で洗っているとき、父はいつも「ほら!お尻がこんなに柔らかいよ!」と、垂れた柔らかいお尻を手で触ってプリンプリン!と揺すります。
機嫌が良いときの入浴時には毎回言っていましたので、私も少々飽き飽きしていましたが笑って聞きました。

2カ所目のグループホーム(特養待ちのため入居)入居の前日の入浴は、もう父の入浴介助も最後かもしれない、父のお尻プリンプリンも私だけにしかしないでしょう、もう見納め、やり納めかな?と寂しい気持ちでした。

余談ですが、厳格な父でも昔は忘年会用のかくし芸、ドジョウすくいの「安木節」を踊って見せたこともありました。
腰振りの踊り系で笑わすのが得意な人です。
認知症中期でもダジャレを言ってみたり、とっさに自作の替え歌を歌ったり、「だいじょ~び!!」と言ったり、おちゃめな部分も結構ある父です。

◆特養で入浴介助
2004年3月、父は2カ所目のグループホーム(2カ月間入居)から特養に入居しました。
もう父の入浴介助をすることはないと思っていましたが、思いがけず特養で父の入浴介助をしたことがありました。

特養の父に面会に行くと父は入浴中でした。
出るのを待っていましたが遅かったので浴室に入ると、父が浴槽に浸かったままなかなか出なくて職員さんが困っていたところでした。
眠っていたのではありませんが、父特有の人の指図は受けたくない&浴槽に浸かったままだという現実を把握できていない…状況でした。

職員さんとバトンタッチして私が介助に当たりました。
父の特養は個別入浴で家庭のお風呂とほぼ同じタイプです。
初めて突然使うお風呂でしたが、シャワーの使い方なども何とか行き当たりばったりで使いこなせました。
父には色々声を掛けて何とか浴槽から出てもらいました。

髪もまだ洗ってなかったので自宅でやっていた方法でシャンプーして、また出なくなったら困るので浴槽に入ってもらうのは止めて、
何とか入浴を済ませ、浴室から無事に出てもらい、服を着せるところまでこぎ着けました。

その後も、特養で父が浴槽で眠りそうになることや、浴槽から出ないことはあったようですが、安全なリフト椅子を浴槽に入れ、それに座って使うことで現在は上手く行っているようです。

◆入院十九日目 9/12(火)
点滴もいつも通り。
朝食は少しだけ、昼食は全量食べたそうだ。(敬老の日の特別献立)
夕食は私の介助でほぼ8割ぐらい食べた。
(おかゆ全量、おかず8割ぐらい、みかんはむせたので一口だけ)
眠そうになったり、食べながら手で私の持つスプーンを撥ね退けることもときどきアリ。
元気で表情も良く、苦しそうな口呼吸はほとんどしなくなりました。
よくしゃべります。

今日もあまり機嫌が良くなく、少しむせたり痰がからむ。
「これいくらするの?」「これは何なんだ?」など、少しは話しをする。

口の中が痛そうだった件は、担当医が看ても何ともなかったそうだ。
昨日の左手の人差し指のアザが、指全体腫れて赤くなっていたのでナースに伝える。
数日振りに髭剃りしてあった。

帰りがけ、同室の患者さんと廊下で行き会い、「大変だね。いつもご苦労様」と声をかけていただいた。
その方は、いつも私が帰るときに「ご苦労様でした」とベッドで言ってくださるので励みになる。

◆時間差をつける
上記の特養での入浴は、父は私だから言うことを聞いてくれたわけではなく、多分、職員さんから私に「人が替わったこと」、そこでちょっと「時間差」が出たことで、父の「浴槽から出たくない」という心境に変化が出たので成功したのだと思います。

認知症の人の心の状態が良くないとき(不穏なとき)、「時間差」をつけることは気分転換を図ることになり大切だと思います。

前に書いた父の自宅での入浴で私がキレたときも、安全であればその場を離れることで「時間差」ができ、そのため、その後父は急に穏やかになっていたように、「時間差」は大事な手段の一つだと思います。

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父を介助して思ったこと……。

入浴だけでなく、他のことに関しても、認知症の人は独特の世界を持っています。
父の場合で言えば、それは「何がどうなっているのか? どうしたらいいのか? 
わからないことへの不安の世界」でした。
私たち普通の感覚で物事を測れない部分だと思います。
自分の価値観や感覚で判断するのではなく、「認知症の人の立場における価値観や感覚に合わせて介助」しないといけないと思いました。
でも、そのようにするのは認知症に対する理解や気遣いが必要です。
私の場合は、認知症の父にに寄り添いながら、何年も時間をかけて理解し、試行錯誤しながら実践している未だ途中過程です。

ご自分が認知症になった時のことを真剣に考えてみてください。
どのようにしてもらいたいか?どのようであったらいいのか?
すると、認知症の人の気持ちが見えてくるとは思いませんか??

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