介護のコラムを読む

介護日記・二人の父の雑記帳

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第60回 認知症中期のタクさん その5(自宅入浴ドタバタ編1)(2006年9月12日

こんなに父のために一生懸命やっているのに、父はわかってくれない。
認知症だから仕方がないとわかっているけれど…。
優しく接していた私ですが、たまには堪忍袋の尾が切れることだってあるんです。

ただ、救いなのは父は怒鳴るけれど、殴ったり叩いたり、物に当たったりの暴力はありませんでした。
そうならないように、できるだけ父の気持ちを考えて接していたせいでしょうか?
言うことを聞かない子ども時代の私には、殴ったり叩いたりした父でしたが…。

◆キレた私
浴槽の湯加減がたまに父のお気に召さないと、「こんなんじゃ熱くて入れやしない!!火傷させる気か!?」と怒ります。
父のためにぬるい40度位にしてあるんですが、それでも…(^-^;;

何しろ、お風呂の温度調整機能が急に熱くなったり、ぬるくなったりで具合が悪く、うまくいかないときもあるんです。
こんなに父のために一生懸命湯加減を調整して、汗だくになっているのに、父にこう言われると、10回のうち1回ぐらいは私もキレました。

「だったら、自分でやってね!!」と言い放って風呂場から出た私は、頭にカーッと来た気持ちを何とか落ち着かせるしかありませんでした。
しばらくして風呂の様子を伺うと、父はただ静かに浴槽に浸かっているだけです。
いつもそうでした。

一人では何もできない父なので、私も気分を入れ替えて「どう??お風呂の具合は??」と何食わぬ顔して
再び入浴介助をすることになります。
そんなとき、父も穏やかになっていました。

◆風呂の出口が認識出来ない
認知症中期も後半になると、父は狭い風呂場なのに出口がわからなくなりました。
私が「出口はこっちよ!」と言っても、タイルの壁を出口だと思っていつまでも触って確かめたり…。
「そんなこと誰が決めた?!」と言って私が指す出口を信じてくれなかったりします。

父は口では「ああ、分かったよ。こっちか?」と言っているのに、行動が伴いません。
「こっち」に脚が向かないのです。
「ここが開くから、ここから一緒に出ようね」とドアを開けて身を持って説明すると「寒いっ!!」とまたまた機嫌を損ねます。

狭い風呂場で出入り口が一つしかないのに、わからなくなり、私の誘導を信じることもできないのです。
そんな日は、風呂場から出ることだけでかなり時間がかかり、父はすっかり冷えて、ますます機嫌を損ねてしまうのでした。

この件でも私はキレたことがありました。
こういうときは、父から離れるのが一番です。

父を風呂場に残して別の部屋で深呼吸して気分を直し、父の様子をそっと探ると…。
父はかれこれ10分以上も風呂場のタイルの壁を手探りしていたのです。
何かに取り付かれたように…。
出口を探していたのか、ここはどこか探っていたのか…??
体が冷えてしまうので、声をかけると今度は何とか風呂場から出てくれました。

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