介護日記・二人の父の雑記帳 第1回〜

【第18回】歯を全て失った日(2006年7月29日)

昨日、S病院の口腔歯科へ出かけるとき、少し前まで居眠りしていたので元気のない父でしたが、特養の園長さん他職員さんに見送られて車椅子に乗ったまま特養の車で出発。
S病院でいつもの訪問歯科の先生(紹介状を書いてくださった)と待ち合わせ。
訪問歯科の先生は車椅子を押してくださったり、何から何まで最後まで一緒にいて気遣ってくださいました。

歯のレントゲンを撮るとき、頭を固定する器具で押さえたため「痛い!痛い!」と父が叫び動くので、数人掛かりで撮影。私も防御服を着て父を押さえに回りました。
私の意向で上の前歯(差し歯4本)だけは今回残したかったのですが、レントゲンの結果、状態が予想以上に悪く、これも抜歯することに。

口腔歯科の担当医を年配の先生と想像していたのですが、意外にも訪問歯科の先生より若い方でした。
車椅子から診察台(普通の歯科のと同じ傾く台)に移るのも、父はできないので訪問歯科の先生が抱き上げて乗せる。
父は体重34kgしかないし、最近は体力が衰え、以前程抵抗しなくなっていたので先生は軽々と抱き上げてました。

診察台を傾け「足を伸ばしてラク~にしていいよ~」と、私は言いながら父の足を優しく伸ばす。
父の口には口を開けっぱなしにする固定器具がはめられた。
「麻酔の注射しますよ」と先生。
全ての歯を抜くため、歯茎の何カ所にもわたり、とても細い注射針を刺すたびに、父は「殺す気かーっ!!」と顔を歪め叫ぶ。
認知症になって以来、子どものように痛みを堪えることが難しくなった父でした。
見ていて本当に辛かった。
痛むたびに動くので、訪問歯科の先生が体を押さえ、私はずっと傍でしゃがみこんで父の両手を握り押さえる。
「ちょっと痛いけど、すぐ痛くなくなるよ~!頑張ってね~!」などと、訪問歯科の先生と交代で父に優しく声をかける。
麻酔が効いてからの抜歯は歯根が弱くなってたこともあり、比較的スムーズで切開することもなく、父も痛がらず次々に抜かれていきました。
こんなに何本もの抜歯を目の前で見るのは初めてでした。

結局1時間かかったかどうかで16本抜きました。
最近、父の特養の入居者で、この口腔歯科で抜いた方は14本だったそうです。

翌日の消毒は訪問歯科の先生がやって下さることになり、飲み薬を処方され、今回だけで全て終了ということになりました。
大きな穴が開いた歯茎も2~3カ月で固まるとのこと。
歯が全てなくなった父の顔は、思ってた通りとても情けないもので、そんな状態にさせてしまったことで辛い気持ちになりました。
歯があることは、本当に大切なことです。
歯を守ることができない認知症という病を憎みたいです。

車で20分、特養に戻ってくると、再び玄関で園長さん始め皆さんがお迎えして声をかけてくださる。
ユニットに戻って、麻酔が取れてきた時間なのだが、父は痛がらず、むしろ出かける前より元気で色々しゃべる。
滅多に最近は言わなくなったトイレも行きたいと言う。
最近は座ってることが多いのに、ユニット内を散歩するし、声がいつもより大きい。
その様子を訪問歯科の先生と見ながら、「辛い思いをしたけれど、良い方向に向かいそうですね」と語り合いました。
明るい気持ちで、私は一旦家へ戻り、気になる夕食時に再び特養へ。

通常通り、いつもの「きざみ・とろみ食」を食べ始めたけれど、まだ出血が完全に止まってなかったので、血と共に少し吐き出してしまいました。
ちょっと無理だったようで、用意したモンブラン・プリンを口に運ぶとよく食べるので、夕食はこれと飲み物だけ。
通常の薬に加え歯の薬がたくさんありましたが、プリンに混ぜると全部飲んでくれました。

父にとって大変な日だったけれど、先々歯茎が落ち着けば炎症の心配もなくなり、少しは美味しく食べることができて、体力回復に繋がるかもしれません。
抜歯は父の延命措置の一環でもありました。
またこの度は、認知症に大変ご理解のある優しい訪問歯科の先生が、ずっと行動を共にしてくださって心強かったし、感謝の思いでいっぱいです。
そして、タクさん!辛い思いをさせてごめんなさい。

【第19回】外国人福祉士容認について(2006年7月31日)については、こちらへ。

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