介護のコラムを読む

介護日記・二人の父の雑記帳

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第16回 父の感謝の言葉(2006年7月26日)

特養のタクさんの夕食介助に行き、さっき帰ってきたところ。

今週の金曜に、一日掛かりでS病院の口腔歯科へ父を連れて行く段取りの打ち合わせをナースとする。
この日は色んな意味で大変な日になりそう。

ホームの園長さんがユニットに回ってきて、私が先日のシンポジウム「ユニットケアの明日」に参加したことのお礼をおっしゃる。
特養を出て帰宅しようとするときも玄関で出会って、シンポジウムの私なりの感想などを再び伝えた。
「もう少し時間があって、『からみ』とかあったら良かったですね」と園長さん。

今日の父、夕食前によく話をした。
父の声はとてもとても小さく、歯がほとんどないので、発声がモゴモゴしているので、耳をくっ付けてよーーく聞かないと何を言っているのかわからない。
でも、よく話してくれるのは嬉しい。

今日も食事は食べる気がない。
食事だと認識していないのだ。

それでも、さじにすくって持たせて、なるべく自分で食べてもらうようにする。
私が食べさせると、以前は嫌がっていたが、最近は赤ちゃんのように口を開けて食べる。

せっかく口に入っても、いつまでもモグモグしている。
または、口に入れても飴をなめているようにして、飲み込まない。
食べている認識が薄い。

食事は歯がないのと、飲み込みが悪いので「きざみ・とろみ食」。
お茶と共に飲み込ませる。そうしないと飲み込まないのだ。
「嚥下障害で飲み込めない」のではない。
食べている認識がないことが多く、「飲み込み方がわからない」から「飲み込まない」のだ。

食べるとよくむせる。
むせると顔が真っ赤になり苦しそうで、目から涙、鼻水も出る。
目と鼻と、口の周りも拭いてあげる。
「落ち着いたら食べようね」と言って、食事中何度かそれを繰り返す。

今日もそれを何回か繰り返していたら、急に正気の顔になり、
いつもよりもはっきり聞き取れる声で、
「今までね、色々と心配していただいて、ありがとうございました」と、私に頭を下げた。

思わず泣きたくなってしまった。グッとこらえ、こんなことで泣いちゃいけない。
「私、お父さんの娘だから、遠慮しなくていいのよ」と言うのが精一杯。

何かあったら父はもう持たない、老衰へ一歩一歩近づいている。
そういつも覚悟しているけれど…。

お父さん、そんなこと言わないで! もっと元気で生きていてほしい!

父はそのうち半分程度食べたところで眠ってしまい、あとは職員さんにお任せして帰宅した。

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