長年連れ添った妻に「あんた誰?」とおっしゃるAさん。「私のことを忘れてしまったのか」と悲しい思いの妻さんです。
さて、そんなAさんのお話をよーく聴いていると、どうやらAさんは今20代の世界で生きてらっしゃるご様子です。ご自分の年齢を27歳とおっしゃいます。ということは…?27歳のAさんの妻は、若くてかわいい新妻、ですね。つまり、今の(27歳の世界を生きている)Aさんの頭の中にある「自分の妻」は「同じく20代の若い女性」。だとすれば、目の前の「おばあちゃん」は、そりゃ「あんた誰?」になりますよね。
Aさん、妻さんのことをすっかり忘れたわけでも、記憶から消し去ったわけでも、存在を無視しているわけでもないのですね。ただ、Aさんの頭の中の「妻のイメージ」が、目の前の人物と一致しないだけなのですね。子どもはいつまでも赤ちゃんのまま。だから大人になったお子さんの顔を見ても「あんた誰?」なのですね。
Aさん、今、目の前にいる「おばあちゃん」は、Aさんと何十年も苦楽を共にして生きてこられた「妻」なのですよ。「そんなはずはない」?そうですよね。Aさんはまだ20代なのですものね。
「私、整形して若返ろうかしら?」なんて冗談をおっしゃる妻さん。せつない泣き笑いのワンシーンでした。