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【第360回】長寿のお祝いにそれって…(2011年2月5日)

おめでたい年齢まで長生きされたAさん。妻のB子さんの献身的な介護のおかげでもあります。さてその賀寿のお祝いにと、親戚一同がお集まりになることになりました。実は、このご親戚がなかなか複雑な関係であまり良好な間柄とは言えず、Aさんの介護も全く何の援助もサポートもなく(むしろ逆だったりする)、B子さんが孤軍奮闘されている状況です。そんな関係の親戚一同がAさんの自宅に集まろうというのですから、B子さんの気疲れは相当だっただろうと思いますし、準備も大変だったと思います。

訪問時、B子さんに「先日のお祝いはいかがでした?B子さんはきっと大変だったと思いますけれど、Aさんはお喜びだったのでは?」とお伺いすると、「とんでもない!」との反応でした。とんでもない!の内容とは…。

親戚の中でも権限のあるCさんから「当日は何もしなくて良い。準備はすべてこちらでするから」と事前に連絡があったそうです。そうは言っても、掃除やいろいろと準備することはあるのですが、食事に関しては、Cさんのいうとおりおまかせしていたそうです。

さて当日。子・孫・ひ孫まで、大勢が自宅に集合しました。大勢が座れるようにと準備したテーブルに、食事のセッティングが始まりました。そこでやおらCさんが並べだしたのは、なんと紙皿と紙コップ!だったそうです。それを見たB子さんは悲しくなって「ウチにあるお皿を使って」と言うと、Cさんは「洗うのが面倒だから」とおっしゃったそうです。

そしてそこへタイミング良くピンポーンと今日のメインメニューが配達されました。それがなんと、宅配ピザ!だったというのです。Aさんの大好物がピザ?そんなわけありません。確かに孫・ひ孫世代は喜ぶでしょう。でも子どものお誕生日パーティではないのですから、長寿のお祝いの席に宅配ピザはないのでは?案の定、Aさんは食べることができません。Aさんを囲むでもなく、若い世代だけで楽しく盛りあがっていたというその光景は、想像しただけで胸が痛みます。こんなことなら自分で準備した方が良かったとおっしゃるB子さん。心がこもっていないってこういうことなんですね。形だけってこういうことなんですね。

長寿のお祝いの席ですよ?Aさんのお好きなメニューで、そしてもしかしたら堅苦しいかも知れないけれど、明治・大正・昭和・平成と生き抜いてこられたAさんの言葉に耳を傾けてほしかったです。そしてそのAさんを支えてきたB子さんにもねぎらいの言葉がほしかったです。

Aさんのきょうだいの方は「これは若者の食べるものだ」と意見したそうですが、いまさらどうなるものでもなく、長寿のお祝いはピザパーティと化したままおひらきとなったという、とんでもないお話でした。私には判りようもないこれまでのそれぞれのご事情があるとは言え、かなしかったです。

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