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【第332回】家族の誕生日(2010年11月11日)

もうすぐお誕生日のAさん。とっても長寿でらして、今年はちょうど節目の賀寿のお祝いになるので、ご親戚の方がたくさんお祝いに集まってくださるそうです。それは嬉しいことですが、妻さんは準備が大変です。そして一言おっしゃいました。

「この人の誕生日はこうして皆が集まるけど、私の誕生日の時は、いつも一人…」
実はこのAさんの妻さんは、介護に関しても孤軍奮闘されていて、お身内の協力を得られないというか、ご親族の中では非常におつらい立場にある方なのです。
「(妻さんの)お誕生日はいつですか?」とお尋ねすると「11月△日」とのこと。
本人さんのお誕生日はもちろん把握している私ですけれど、ご家族さんのお誕生日までは気がまわっていません。今月だったんだ…。もうすぐだなー。

さてその11月△日当日。どうしようかなーと思ったけれど、あんなせつないお気持ちを聞いてしまいましたし、せめて電話で「おめでとうございます」のメッセージを伝えようと思いました。電話すると、妻さんとは違う方が出られました。あれ?おかしいな?二人暮らしですから、そんなはずはない…ヘルパーさんでもないし…と思っていると「留守番の者です。Aの妻は夕方まで帰宅しません」とおっしゃいます。珍しくご親戚の方が外出する妻さんのためにお留守番に来てくださったようです。

そして夕方。もう一度電話をすると、今度は妻さんが出られました。そして「お誕生日おめでとうございます」と伝えました。「まぁ、ありがとう」という言葉とともに、今日の出来事を話してくださいました。今日は実は、以前から気になっていた「ご友人のお見舞い」にようやく行けたそうなのです。お見舞いに行ったところ、そのご友人は妻さんのお誕生日を覚えていてくれて、ケーキを用意してくださっていたそうなのです。「お見舞いに行ったつもりが、お祝いされて帰ってきたのよ」と、それでも嬉しそうな妻さんです。「ケーキでお祝いしてもらったのなんて初めて」なんだそうです。

というのも「戦時中はもちろんそんな状況ではなかったし、戦後はバタバタしていたし、生活が落ち着いた頃はもうお祝いするような年でもないしね」というわけなんですね。そっか…そうですよね。戦中、戦後と必死で生活を守り、そして今は夫の介護で外出もままならない日々。これまでの歩みと毎日の奮闘に心から敬意を感じます。

Aさんの妻さん、大変な時代を本当におつかれまでした。お誕生日、言葉だけですけれど、せめておめでとうございますの気持ちを伝えたくて慌ただしい時間にお電話差し上げました。毎日の奥さまの頑張りには本当に頭が下がります。どうぞ無理なさいませんように…。とは言え、無理をせざるを得ないですよね…。もどかしいです。

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