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【第243回】ドイツの「ケアアシスタント」(2010年3月12日)

私が施設に勤務していた頃に感じていたこと。それは、利用者の方とゆっくり向き合うことが大事なのだろうとは思うのだけど、掃除とか配膳とか介助とか、「身体を動かしている」方が仕事をしている感じがするということ。利用者さんとゆっくりお話しをしていると、落ち着かないというか「(他のスタッフから)さぼってると思われてないか」とか、いろんなことを考えてしまうのです。

今、一人の訪問者として施設に伺っても、同じような感じがします。スタッフさんは「常に何かをしている」のです。「常に動いている」あるいは「常に作業をしている」なのです。人手も少ないし、本当に忙しいのもあるでしょうし、さまざまな課題があることは承知の上で誤解を恐れずに言えば、私が感じた「そのほうが仕事している感じがする」というのも多少はあるような気がしています。

さて『シルバー新報 2010年3月5日号』の「変わるドイツの認知症ケア 第5回」を読んで、「これだ!これが日本にも必要だ!」と思いました。同じしくみではなくても、その「価値観」が必要だと思ったのです。以下、記事をそのまま引用します。ただし全文ではなく、前半5分の1程度です。お許しを。

塗り絵、音楽鑑賞、お墓参りに動物の世話…さて、これは一体何でしょう?これらは全て、ドイツの介護保険改革によって誕生した「ケアアシスタント」が行う業務として、法律に規定されているものである。介護の現場で働いていると、「もっとこの方とゆっくり昔話をしていたいな」と思う瞬間がよくある。しかし現実には業務に追われてしまい、なかなかそうは出来ない。人手が足りなくてゆったりと寄り添える余裕がないのはドイツの介護施設でも同じだった。そこで認知症の方とのコミュニケーションに重点をおいた新たな職種を、と08年に実施されたのがケアアシスタント(Betreuungskrafte)。身体介助等の直接援助は行なわず、入所者の「付加的な世話」、いわば心のケアに特化した職種だ。

この資格を定めた法律には、ケアアシスタントの業務を次のように記載してある。『塗り絵・工作・日曜大工・簡単なガーデニング・動物の世話・料理・アルバム作り・音楽鑑賞・歌・ボードゲーム・トランプ・散歩・ハイキング・エクセサイズ・ダンス・文化的催し物や競技会を訪問・礼拝・お墓参り・読書・朗読・アルバムを見る』。
 
~以下省略~
以上『シルバー新報 2010年3月5日号 変わるドイツの認知症ケア 第5回(熊本学園大学大学院 荒牧弥生)』より前半5分の1程度を抜粋

そうなんです。これが大事なんです。ケアアシスタントは「させる」のが仕事ではなく、「一緒にやること」が求められているそうです。私は施設勤めの頃、利用者さんと将棋をさしてばっかりいる(と思えた)同僚のZくんを見て「また遊んでる!」と思ってました。今なら、その認識は大きな間違いであったと理解できます。記事の後半の一節では「しかし、ケアアシスタントの誕生の意義はケアの質向上だけでなく、「認知症の方々とゆっくり向き合うことが介護の現場にとって大切なことである」ということを保障された意味で画期的なものだった」と書いてあります。

「ゆっくりと向き合うことが大事」という価値観が、日本の介護現場にも浸透し、それが実現できる体制が整うことを願ってやみません。かつての自分を思い出しながら、自戒をこめて、記事を読みました。

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