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【第207回】生活感(2010年1月7日)

Aさん宅には複数のヘルパー事業所が入っています。ある事業所から電話がありました。
「最近、Aさんは下着まで便で汚れていることがある。それをそのまま洗濯機に入れるヘルパーがいるらしい」というのです。洗濯は娘さんがされるのですが、精神に障がいのある娘さんは、便のついた衣類が洗濯機に入っていると、どうして良いか判らず、それを捨ててしまうそうです。「それはもったいないから、洗濯機に入れる時は、手洗いで汚れを落とすようにとAさんがおっしゃっているので、連絡帳にも書きますが、他の事業所さんに伝えてください」という電話です。

いやいや、ちょっと待って。「娘さんが捨ててしまうから、下洗いをして洗濯機に入れる」のではなく、「捨ててしまわなくても」洗濯機に入れる時は下洗いは必要ですよね?
と言うと、電話のヘルパーさんは「私もそう思うんですけど、そうじゃないヘルパーさんもいるみたいで…」と困惑した様子。よく聞くと、それは別の事業所の男性ヘルパーのようです。

男女で論じるのは本意ではありませんが、でも、きっとその男性ヘルパーは、自分の生活では「汚れたもの」を自分で洗うことがないのでしょう。おそらく、汚れたまま洗濯機に入れておけば、母親か妻が洗ってくれているのだと想像します(勝手な想像ですけれど)。「汚れたものを洗濯機に入れる時は、下洗いをしてから」なんて介護の教科書にも載ってないのでしょうね。とりあえず、他の事業所さんにその旨を電話で伝えました。該当する男性ヘルパーがいる(と思われる)事業所さんの責任者さん(これも男性)は、電話の向こうで、私の言っていることを一つひとつメモしているみたいです。「汚れたものを…」といちいち復唱してくれました。

どうやら、こういうことも「マニュアル」にしないといけないみたい。ヘルパーさんに必要なもの。それは、介護技術はもちろんのこと、生活感! これですよ。

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