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【第63回】路地で見知らぬ高齢女性から針と糸を…(2008年10月16日)

市役所付近の路地を駅に向かって歩いていた時のことです。
この路地付近は昭和の雰囲気が残っていて好きなので、車がビュンビュン通る大通りではなくこの路地を歩くことが多いです。
外からアイロン掛けしている様子が見える「クリーニングやさん」とか色あせた台所洗剤が売られている「なんでもやさん」などがあります。

さてそんな路地を歩いてると見知らぬ高齢女性(というよりも「おばあちゃん」という言葉が似合う)から声をかけられました。でも訛りが強くて聞き取れません。
手元をみると針と糸と布を持っています。
何だ??と不思議に思いつつ「この針に糸を通したらいいのですか?」と尋ねました。
するとウンウンとうなずかれます。針には短い糸が通っていたので「この糸は抜いて、新しく糸を通すんですね?」と確認。
どうやらそのとおりで、自分では針に糸が通せないから助けてほしいということのようでした。
糸がとおると大喜びでお礼を言ってくださいました。

不思議な体験でした。
ここからは私の勝手な想像です。
このおばあちゃんはずっと田舎(かなり日に焼けておられたし、訛りも強かったので遠い南の方?)で一人で暮らしていたのでは?。
そこは地域のつながりが強く、道を歩く人は顔見知りで、困った時はお互い様という昔ながらの土地柄。
でも一人暮らしがしんどくなって(本人は大丈夫と思っているけどコドモたちが心配して)、大阪に住むコドモと同居することになった。
でも大阪には畑もないし手持ちぶさたで、繕い物でもしょうかと針と糸をだしてきたものの、針に糸がとおらない。
そこで、以前暮らしていた時と同様に近所の人に助けてもらおうと外にでた。
でも知っている人はいない。
どうしようかと思っているところへ私が来た…という感じでしょうか(想像…というより創作ですね)。

あのおばあちゃんが平和に暮らしていかれることを心から願っています。

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