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【第52回】結局「様子をみる」になって(2008年9月11日)

先日、朝起きてケイタイを見たら22:35に利用者さんの配偶者さんから着信があったことに気がつきました(夜気付いたとしても、でるかでないか、でたとして対応をどうするのかは今の私のジレンマなのですが)。
朝一番にこちらからお電話しました。
すると、夜に利用者さんがお酒を飲んで暴力をふるったのだとのこと。
以前から精神面の問題、アルコールの問題などなど考えるべきことがたくさんある方です。
お話を聞いているうちに、近日中に最寄の総合病院の口腔外科の受診予約をしていることがわかりました(歯の状態が悪く食事がとれないことも課題の一つ)。

私はその受診をきっかけに事態をなんとかしたいと考えました。
でも口腔外科だけ受診して帰宅しても何にもなりません。病院のソーシャルワーカーに連絡をし、事情を伝え、口腔外科と以前から受診している内科の主治医と同じ日に受診できるよう調整を依頼しました。
なんとか調整がつき、本人の了承も得られたので昨日一緒に3人で病院に行きました。
配偶者さんの顔や腕には、まだ青あざが残っています。
できることなら利用者さんの入院で少し小休止を…と思いましたが、入院するべき明らかな身体的な病状はありませんでしたので、それは無理でした。
でも口腔外科、内科、ソーシャルワーカーと情報を共有できたこと、少し今後の見通しができたことで利用者さんも配偶者さんも少し落ち着かれたようです。

待ち時間が長かったので配偶者さんとじっくりお話をすることができたことも良かったと思います。
配偶者さん自身は、決して強制的な入院を望んでいるわけではありませんでした。
「30年連れ添った人だから、無理矢理入院させるようなことはしたくない。できることなら、入院する必要あっての入院で、しばらくお酒と離れた環境で過ごし、落ち着いた状態で帰宅してもらって、おだやかに過ごしたい」とのお気持ちでした。
先日の夜は、息子には迷惑をかけたくないから電話せず、あとの報復が怖いから110番も精神科の病院にも電話せず、私に電話をくださったとのことでした。

病院にいること3時間。
結論は、利用者さん自身や配偶者さんのお気持ちから、まずは様子をみることになりました。
そして今度危機的状況になった時にはどうするかを病院側と相談しました。
これは「介護保険」だけの問題ではないと思います。
もちろん行政の精神の相談員にも随時連絡をとっていますが、でも、実際に動くのはどうしても生活をサポートしている介護保険のケアマネジャーになります(もちろん、ケアプランの変更にもつながるのでケアマネが動く必要もあるのですが)。

国のおエライ方々には、決して介護度だけでは計れない、このようなケアマネの動きがあることをぜひとも知っていただきたいと思います(この方も介護度はそう高くない)。
もし、夜中にまたお酒を飲んで暴力をふるわれ、傷害事件(あるいは殺人事件)になった時、私はどこまで責任を問われるのでしょうか。
夜のケイタイにでなかったことで、もし事態が悪化したとしたら、それはケイタイにでなかった私の責任でしょうか。

もう一つ。今回さまざまな専門職が関わっていますが、配偶者さんの方に関わっている行政の相談員(配偶者さんは障害者手帳をもっておられ、その障害の制度を使ってヘルパー利用しているので)の関わり方に疑問を持っています。
配偶者の気持ちを確かめることなく(というより今まで一度も会っていない)、今朝自宅に電話をし、配偶者に本人の精神科への入院という選択肢のみをかなり具体的に示しているのです。
もちろん配偶者はそのつもりはありませんから困惑しています。
また、あちこちに連絡調整をしている私には何の連絡もありません。
信頼関係とか連携とは何なのかということをつくづく感じました。

結局「様子をみる」という、記録に残すと月並みな表現になる結果となりました。
実地指導などにくる役所の方々には「様子をみる」というひとことの背景を、ぜひともくみとっていただきたいと思います。

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