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親ケア奮闘記Part5【慟哭編】

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【慟哭編・第1回】喜びの父。

あっという間のクラッカー!

退院した母と再び2人で暮らし始めた父は、この上ないほどの上機嫌でした。

母の強固な反対で、ホームヘルパーに家事をサポートしてもらう計画は未遂に終わったものの、ケアマネジャーのKさんが口説き落としてくれたおかげで、デイサービスには週3回のペースで通うことに。 デイサービスについては先輩である父が、これでもかとばかりに世話を焼きまくります。

「母さん、Aさんが迎えに来てくれたがや!」
「Aさんは、車の中で面白い話をしてくれるんだて」
「母さん、こっちの席に座りぃて」
「着いたがや。あっという間のクラッカー!」
「Bさん、Bさん!母さんにおいしいコーヒーを入れてちょー。もちろん、ワシのも」
「母さん、お風呂に入れてもらうときは、遠慮せずにドンドン洗ってもらうといいがね」
「Bさん、Bさん!母さんに風呂上がりのお茶をあげてちょー」
「母さん、もうすぐお昼だがね。ワシの横で、一緒に食べるがね」

後で、さまざまなスタッフから聞いた父の言動を苦笑混じりに教えてくれたKさんに対し、私は恐縮するばかりでした。

自分が頑張らないと!

両親が同じデイサービスに通うようになり、どちらも「横井さん」では紛らわしいということで、それぞれ「陸夫さん」「かつ子さん」と呼ばれることに。

2人ともファーストネームで呼ばれるのに慣れていないため、最初のうちは「陸夫さん」と声をかけられても、自分のことと気づかずにボーッとすることも多かったようです。

父があまりに母を構うので、スタッフの1人から「陸夫さんは、本当にかつ子さんのことが好きなんですね」とからかわれたときも、「え? 誰がワシの母さんを好きだって?」と詰め寄ったことがあるほど。

「陸夫さんは、まだ耳が不自由なわけでもないので、そのスタッフも最初は冗談を言い返されたのかと思ったそうなんですが、あまりに真剣な様子だったので、言葉に詰まっちゃったようで」Kさんの話は、私にとって父の意外な一面を知ることができ、興味深いものでした。

「こうしてお話を聞いていると、両親そろってデイサービスに通わせるようにしたのは、 やはり正解だったと思いますね」
「えぇ。陸夫さんは『自分が頑張らないと!』と、随分張り切ってるみたいですね。これまで敬遠気味だったレクリエーションにも、積極的に参加してくれてますし。かつ子さんも、そんな陸夫さんを頼りにしているみたいですよ」

母の発病前とは少し形が違うものの、両親が2人で支え合っているという事実が、私の心を喜びで満たしてくれました。

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