親ケア奮闘記Part4【激動編】

【激動編・第24回】変わり果てた母。 その1

最近は、穏やかに過ごされていますよ。

「お母さんに面会してもらえるようになりました」と病院から連絡があったのは、母が閉鎖病棟に移されてから3カ月半ほど経った頃でした。

連絡をしてくれた看護師に礼を言った私は、本人と少し話をしたいので、母を電話口に呼んでもらえないかと頼んだのですが、
「いえ、それはちょっと」と断られてしまいました。

何か問題でもあるのかと聞くと、それは主治医から直接聞いてほしいとの回答。
それでは主治医に代わってほしいと頼むと、主治医は不在とのことでした。
半年ほど前に、母が悪性症候群のために死ぬかもしれない状態に追い込まれたときのことを思い出して、私の心に不安が募ります。

ただ、何かできることがあるわけでもなく、主治医が面談の時間を取ってくれる3日後に合わせて、仕事を休めるように調整するしかありませんでした。
「最近は、穏やかに過ごされていますよ」という、看護師の言葉だけを信じて。

その日の夜、父に電話をかけて母と面会できることを伝えると、「そうか、良かった良かった」と無邪気に喜んでいます。
「早く母さんに退院してもらって、家のことをいろいろやってもらわないと」
「いや、それはやめろ」
「なんでぇ? 孝ちゃんもラクになるがね」
「だから、母さんが退院できるようになったとしても、病み上がりなんだから養生しないとダメだろ。
 そもそも、やっと面会できるようになっただけで、いつ退院できるかなんてわかんないんだから」
「あのヤブ医者たちは、なんでとっとと治してくれないんだ」
「頑張ってくれている先生たちに、なんてこと言うんだ!」

結局、父を叱りつけて電話を切ることになってしまいました。

……母さん、久しぶり。

週末、父とともに母がいる病棟へと行くと、すぐに面会室へ通されました。
案内してくれた看護師は「それでは、すぐにお連れします」との言葉を残して退室。

まだ1人で行動させると何をやり出すのかわからない状態なのかと、密かに心配しながら待っていると、ほどなくしてドアがノックされ、先ほどの看護師が母と一緒に入室してきました。

「母さん」と声をかけようとした私ですが、母の姿を見て言葉を失いました。
母は車いすに乗せられ、身体は不自然にねじれています。
首はうなだれ、手入れされていない髪は無造作に伸びたままでした。

いつも身ぎれいにしている母のイメージからはかけ離れた姿です。
入院後、病状が良くなるとともに化粧品を欲しがり、外出時にはいつも悩みながら服を買ったりしていた様子を覚えているだけに、私のショックは大きなものでした。

横にいる父の様子を見ると、父もまた言葉を失っているようです。

硬直した空気が気まずくなったのか、看護師は「それでは、ごゆっくり。お帰りになるときに声をかけていただけたら、○○先生のところへご案内しますね」と言い残して、すぐに退室していきました。

「……母さん、久しぶり」
やっとの思いで声をかけた私に反応し、ゆっくりと顔を上げた母の目は濁り、悲しくなるほどに力の無いものでした。

【激動編・第25回】変わり果てた母。 その2については、こちらへ。

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