親ケア奮闘記Part4【激動編】

【激動編・第20回】奈落。 その3

ケガの功名。

いつ終わるともしれない母からの電話攻撃にギブアップ寸前だった父は、ケアマネジャーKさんの誘いに乗ってデイサービスに通うようになりました。
確かにデイサービスに行っている間は、母からの電話がかかってくる心配はありません。

それまで私も何回かデイサービスの利用を勧めていたのですが、父は「ワシは独りで何でもできるがね」とか「年寄りだらけのところなんて、行きたくないがね」などと言って、頑なに断り続けていました。

いざデイサービスを利用し始めてみると、お風呂で身体や頭を洗ってもらえたり、スタッフの人たちからやさしく声をかけてもらえたりするのが嬉しいようで、機嫌良く通うようになりました。
自宅で配食サービスの弁当を食べるのと違って、ちょっとした外食気分を味わえるのも、父にとっては楽しかったようです。

最初は週に1回だけ利用する予定でしたが、翌週には父が「もっと行きたい」と言い出したため、通常の介護保険サービスで利用できる週2回に加えて、実家のある地域で独自に行っていた「高齢者生きがいデイサービス」という制度も利用して、合計で週3回、デイサービスに通うことになりました。

父のあまりの豹変ぶりに驚いた私は、Kさんと会った際に「これは『ケガの功名』って、ヤツですかねぇ」と苦笑しながら尋ねたものです。

迎えに来てくれたんじゃないのか?

一方、母からの電話攻撃は激しさを増し続け、すぐに病院の患者やスタッフたちにも知れ渡ることになりました。

電話の前後は特に気が高ぶっていて、他の患者やスタッフにケンカをふっかけるような言動も目立ってきたため、トラブルを避けるために個室に移すことに。
他の患者との接触をできる限り減らし、興奮状態が落ち着くかどうかを見極めたいというのが主治医の見解でした。

母が個室に移ってから初めて面会に行った際のことです。
面会室ではなく、母の病室まで入って構わないと言われた私が、ドアを開けて入室するなり、私の姿をめざとく見つけた母が、すごい勢いで私の側までやってきました。

「孝治、よくやって来てくれた!」
「さすが、私の『大事の息子』!」
「嬉しくてたまらん! サンキュー、サンキュー!」
などなど、すごい勢いでまくし立て、満面の笑みで私の両手を握りしめてきます。

「母さん、電話をくれるのは嬉しいけど、もう少し回数や時間を減らしてくれないかな」
「わかった! 孝治が来てくれたから、もうそんな必要はないし!」
「あと、『殺す』ってのは止めて。すごく悲しいから」
「寂しくて冗談言ってるだけだから。孝治がイヤなら止める」
なかなか良い感じで会話ができます。
個室に移って、少し母の調子が良くなってきているのでしょうか。

さらに母は言葉を重ねました。
「パンツや靴下が盗まれて困る。買いに連れて行ってくれ!」
「今日は何を食べに行こうか!」
「早く家に帰って、掃除をしないと!」

それに対して「ちょっと外出はできないんだけど、母さんが好きなイチゴを買ってきたよ」と私が話した途端に、母の表情が一変。
言葉にできないほど怖い目で私を凝視してきました。

「迎えに来てくれたんじゃないのか?」
「あぁ、母さん、最近少し調子を落としてるようだし、しっかり治さないと」
「こんなところに閉じこめられて、治るはずないだろ!」
「ちょっと、落ち着いて」
「私がどんなにツライ思いをしているか! こんなところで身体を改造されて!」
「いや、改造なんてないから」
「孝治は何もわかっていない! 助けてくれ!」
どうにも会話になりません。
母の両手は、私の両手を握りしめたまま。力がドンドン強くなり、爪も食い込んできます。

結局、様子を見に来た看護師が間に割って入り、面会は強制的に終了。
母がこれ以上興奮しないようにと、私はそのまま退出させられることになりました。

【激動編・第21回】奈落。 その4については、こちらへ。

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