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親ケア奮闘記Part4【激動編】

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【激動編・第8回】好転。 その3

嬉しい、嬉しい。

体調の回復や、Iさんとの交流などをきっかけに、母の精神状態も上向きとなり、日に日に前向きな言動が目立つようになりました。

それまで自分に恐怖を与える存在として嫌っていた主治医に対しても、廊下などですれ違ったときに「先生、おはようございます」と自分からあいさつするようになり、病棟内のレクリエーションとして描いた絵を私に見せてくれたりします。

主治医の言った通り、病院内だけでなく、家族と一緒なら短時間の外出も認められるようになり、病院から車で15分ほどのショッピングセンターでセーターを買ったり、食事をしたり、好物の果物を土産として買ったりと、久々の一家団欒のひとときを過ごすこともできました。

髪がボサボサなのを気にするようになったので、ショッピングセンター内にあった美容室に連れて行くと、「嬉しい、嬉しい」と喜んでいました。

また、精神に異常をきたしてからは化粧にもまったく無頓着だったのですが、基礎化粧品や口紅が欲しいと私にねだるようになり、実家で使っていた化粧品ケースを病室に持ち込み、ある日突然メイクした姿で診断を受けて、主治医を驚かせたりもしていました。

開放病棟。

母を開放病棟に移すことになったのは、この頃のことでした。

開放病棟は病院内での移動も制限されるこれまでの閉鎖病棟とは違い、病院の敷地内を自由に動くことができるほか、家族との面会や外出についての規制もはるかに緩く、その分、比較的病状の軽い人や、退院間近な人が入院している病棟です。

主治医から病棟変更の話を聞いた私は、母の回復が具体的に形となったこと、そして退院が一歩近づいたことに喜びを覚える反面、一抹の不安がありました。

それは、人見知りの激しい母が同室のIさんにとてもよく懐いており、2人を引き離すことで、また何か悪い影響があるのではないかということです。

医師にその話をすると、「あ、ご心配なく。開放病棟でもIさんが同室になるようにしますから」とのこと。

Iさん自体の病状は非常に安定しており、本来なら開放病棟にいても問題ないものの、病室の空き具合や、患者同士の組み合わせの都合で2年ほど前に閉鎖病棟に移ってきてもらっていただけで、今度、閉鎖病棟に入院する人が2人いるので、母とセットで2人部屋を空けてもらうと助かるというのが、その理由でした。

ある意味、便利屋さんのように扱われるIさんのことをかわいそうに思いつつも、私に断る理由はありません。「よろしくお願いします」と頭を下げるのみでした。

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