親ケア奮闘記Part4【激動編】

【激動編・第2回】主治医からの電話。

落ち着いて聞いてください。

8月の終わり。
母の様子がおかしくなって、ちょうど1年が経った頃でした。

午前中、いつものように仕事をしていると、携帯に覚えのない番号からの着信がありました。
市外局番を見ると三重県から。
通常の企業なら業務時間の真っ最中です。
友人からなら、まずメールを送ってきそうなものです。

少しいぶかしく思いながら電話に出ると、
「あ、横井さんですか。私、○○病院の○○です」と、聞き慣れた声。
電話の主は、母の主治医でした。

「あぁ、いつもお世話に……」
「落ち着いて聞いてください」
あいさつをしようとした私を遮るように、主治医は言葉を重ねました。
「お母さんが、危険な状態です」

私は一瞬、主治医が何を言っているのか理解できませんでした。
数日前に面会に行ったときも、それなりに調子が良さそうで、食事の後に、私が買い与えたソフトクリームを父と一緒に食べていたのに……。

「横井さん?」
「……あ、はい」
「私たちも全力を尽くしますが、できれば横井さんにすぐにでも来ていただいて、お母さんを励ましていただきたいんです。次にいつ、お越しいただけますか?」
「どういう状況なんでしょうか?」
「急変すると、命に関わる可能性も少なくありません」
「一体、なんでまた……」
「とにかく、詳しい話はお会いしたときに説明しますので……」
「わかりました。昼過ぎにはそちらに到着するよう、これからすぐ出ます」

上司や同僚に簡単に事情を説明すると、その日に作成するつもりだった作りかけの会議資料とノートパソコンを鞄に詰め込み、会社を後にして、三重県へと向かう電車に乗りました。

電車の中でノートパソコンに向かって作業をしながらも、私の頭は「命に関わります」という主治医の言葉でいっぱいでした。

なんで母が死ぬかもしれない状態になっているのか?
少しでも早く病院にたどり着きたくて、電車の速度がすごく遅く感じられました。

なんで、なんで、なんで……?

母の入院している病棟に到着すると、私はすぐに病室へと案内されました。
通常は、ナースステーションの近くにある面会室までしか入ることを許されないのですが、このときばかりは看護師が「こちらです」と私を先導してくれます。

病室に入った私の目に最初に飛び込んできたのは、ベッドを見下ろすようにしている主治医の背中。
私が入室したのに気づいた主治医は振り返り、「申しわけありません」と頭を下げました。
ベッドのほうに目をやると、ぐったりと横たわる母の姿。
身動き一つしていません。

「……え?」

母さんが死んだ?
この間、少しだけど笑顔も見せていたのに?
なんで?
なんで、なんで、なんで……?

「……横井さん?」
言葉を失っている私の様子を見て、主治医が声をかけてきました。
「私たちが付いていながら、申しわけありません」
「え? ……あ、いえ」
「つい先ほど、強めの鎮静剤を打って、お休みいただいたところです」
「……?」

……?
…………。
………………!

「母は生きているんですね!?」
「はい。でも危険な状態であることに変わりはありません」
「良かった……。本当に、良かった……。で、母の状態は回復するんでしょうか?」
「全力を尽くします」

とりあえずほっとひと息をついたものの、何がどうしてこうなったのか、私にはまったく理解ができません。
「先生、状況を詳しくお教えいただけますか?」
「えぇ、もちろんです。ナースステーションの横の診察室へ行きましょう」

【激動編・第3回】振り出し以下。 その1については、こちらへ。

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