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親ケア奮闘記Part3【迷走編】

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【迷走編・第26回】サービスを利用したいけど。 その8

特別なヒケツがあるわけではありません。

「息子さん、お疲れ様でした。Sさんは、いつ来られることになりましたか?」
父の自慢話が一区切りついたのを見計らい、Kさんは私に声をかけてきました。Sさんが実家に来てくれることも、すっかりお見通しです。

「来週の土曜の15時頃に来ていただけるそうです」
「では、私もそのときに一緒にお伺いしてよろしいですか?」
「えぇ、それはもちろん構いませんが……」
かつて、他人が家に来ることをとことん嫌がっていた父の様子を思い出して、説得方法に思いを巡らせる私。

「あのね、父さん……」
「横井さん、今度私と、私がお世話になっているSさんの2人で、お家までお邪魔しますね」
「はい、楽しみです」

私が口を挟む間もなく、快諾する父。完全にKさんの言うがままです。

私が席を外している間に、要介護認定の申請をすることにも同意していたようで、事前にKさんに「念のため」と言われて印鑑を持参していた私は、その場でいくつかの書類にサインをして、Kさんに託しました。

後日、Kさんと2人きりのとき、初対面の父の心を簡単に掌握したヒケツを尋ねたのですが、「別に特別なヒケツがあるわけではありません。普段、お一人で暮らしておられるんですから、まずはお父様自身のことを理解しようと、お話を聞かせていただいただけですよ」とのこと。それが「傾聴」という高齢者と接するための基本の一つであることを私が知るのは、さらに数年後のことです。

このまま調査をさせてもらって構いませんか?

それから数日が経ち、KさんとSさんは約束通り実家を訪ねてくれました。
「横井さん、お弁当はおいしい?」
「はい、おいしいです」
Kさんと会った日の翌日から配食サービスを利用しており、毎日2食の弁当の内容には父も満足していました。

用意しておいたお茶菓子をつまみながら、父の自慢話や、入院中の母がどんな人物なのかをテーマにしばらく歓談した後、Sさんだけが先に帰宅。残ったKさんが「実は……」と話し始めました。

「私、要介護認定の訪問調査員もしているんです」
「へぇ、いろんなことをしておられるんですね」
「町から正式に依頼を受けて、横井さんの調査を担当することになったので、もし良かったら今日、このまま調査をさせてもらって構いませんか?」
「えぇ、もちろん」
「簡単な質問と、お身体の状態を見るために少し動いていただくだけですから……」

その後、Kさんは調査票を取り出してテキパキと質問を進めていきました。父が見栄を張って、できもしないことを「できます」と答えるたびに、「嘘をついちゃダメだろ」と私も口を挟みながらでしたが、1時間ほどで質問は終了。調査員が既に面識のあるKさんだっとこともあって、父もリラックスした雰囲気のまま答えていました。

帰り際、Kさんは「息子さん、介護保険の申請には、主治医の意見書というものが必要なんですが、どちらかに横井さんかかりつけのお医者様はありますか?」と尋ねました。
「いえ、特には」
「こちらから、横井さんが入院前にかかられた○○クリニックの先生に依頼してもよろしいですか?うちの在宅介護支援センターとは経営母体が同じですし、話が早いので」
「えぇ、ぜひお願いします」

こうして要介護認定についての手続きも片付いてしまいました。その翌日の日曜日には、緊急警報装置の設置工事が終了。私を悩ませていたいくつかの問題は、ほんの1週間ほどで解決してしまいました。

おやろぐ
親ケアでんき